全世界を襲っている物価高騰が、この秋にいよいよ日本に「本格上陸」する。すでに輸入品や食料品では始まっている値上げが、ついに国産の工業製品やサービスにまで広がるのだ。
国内製造業は円安で値下げが可能になり商品競争力は向上するが、それは輸出の話。国内市場では原材料や燃料などの輸入品が割高となり、価格の高騰を招いている。
ソニーグループ<6758>の子会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は9月15日から、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の希望小売価格を6万478円に引き上げる。現行価格より5500円の値上げだ。原材料費や生産および物流コストの高騰を受けてのもの。
一方、米国での価格は変わらない。同じ価格で販売しても、円安の進行で日本円に換算すれば値上げと同じ効果が得られるからだ。
SUBARU <7270> もスポーツ用多目的車(SUV)「フォレスター」の一部改良に併せて、車両価格を5万5000円引き上げると発表した。エンジンの仕様変更や標準装備の追加はなく、純粋な「値上げ」となる。原材料費の高騰を受けての措置だ。
オリエンタルランド<4661>はテーマパークの「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」内のレストランメニューのうち、20種類・80品目で50円から100円の値上げに踏み切る。食材の価格高騰や円安が原因だという。
愛煙家にも厳しい値上げが待っている。日本たばこ産業(JT) <2914> は10月1日から、加熱式(電子)たばこ41銘柄について価格を20~30円ほど引き上げると財務省に申請した。「メビウス・メンソール」など14銘柄を570円から600円に、「メビウス・プレミアムゴールド・フローズン」など24銘柄を580円から600円に、それぞれ値上げする。こちらは原材料費などの高騰ではなく、同日から始まるたばこ税増税に合わせた措置だ。
この4件の値上げは、奇しくも25日に発表された。お互い示し合わせたわけではないだろうが、これまでの「デフレ経済」下の経験から値上げに極めて慎重だった企業が「みんなで渡れば怖くない」とばかりに方向転換したのは気になる。
円安に伴う原材料や燃料の値上げを吸収しなければならない国内企業の事情は理解できるが、一方で輸出や海外販売比率が高い企業では円安メリットも享受しているはず。「よそもやってるのだから、ウチも」という便乗値上げには消費者が厳しい目を向けるべきだろう。
文:M&A Online編集部
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