【セントラル警備保障】ドミナントからハイテクへ、変わるM&A

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セントラル警備保障は国内3位の警備会社。主力の常駐警備のほか、機械警備や運輸警備機器販売、工事・機器販売なども手がける。創業は1966年3月、その直後の同年6月にビートルズ来日公演での警備を受注したことで一躍有名になった。

常駐警備では半世紀以上の実績がある(同社ホームページより)

機械警備が主力の企業と合併

1972年に三井物産<8031>と住友商事<8053>の共同出資で発足した日本セントラルシステムとの合弁で、機械警備を手がけるセントラルシステム警備を設立した。1979年に合弁のセントラルシステム警備がセントラル警備保障を吸収合併して、同社は消滅。しかし、セントラルシステム警備が商号をセントラル警備保障に変更したため、社名は存続することになった。

同社は1979年にロサンゼルスにCSP U.S.Aを設立、1983年には大韓海運との共同出資で韓国・ソウルに大韓中央警備保障を設立するなど、国際化にも乗り出している。

2014年からは、いよいよ積極的なM&Aを展開する。目的は国内警備事業の強化だ。同10月に長野県内での業績を拡大するため、警備、セキュリティーサービスを手がける長野県内の警備会社2社と警備機器を販売する会社1社の持ち株会社であるHOPE(長野県、3社の合計売上約22億円)の株式51%を5億円で取得して子会社化した。

M&Aで首都圏の足場を固める

同12月にはUDトラックス(旧・日産ディーゼル工業)の100%子会社で、主に埼玉県内の警備事業を手がける日本キャリアサービス(埼玉県上尾市)の全株式を譲り受けている。(買収価格は非公表)

2015年9月にはユニティガードシステム(東京都港区)から機械警備・巡回警備事業会社のユニティガード機械事業(同)の全株式を取得(買収価格は非公表)。同社の買収により、首都圏での機械警備事業の強化と採算性の向上を目指した。

16年9月には神奈川県内で機械警備、警備輸送業務、施設警備を展開する特別警備保障(神奈川県平塚市)の株式60.3%を取得し、連結子会社化している。

2014年以降に本格化したM&Aは、首都圏や長野県での警備事業を強化するドミナント戦略の一環だった。しかし、今年から「風向き」が変わっている。

M&Aで首都圏の拠点を充実(同社ホームページより)

M&Aの「風向き」が変わった

2019年3月19日にセントラル警備保障はリアル(現実)とサイバー(インターネット)のセキュリティーを統合したソリューションの提供に向けて、シーイーシー(東京都渋谷区)と協業すると発表した。

両社の連携で、セントラル警備保障による迅速な警備サービスを活かした駆けつけや一次対応と、シーイーシーのサイバーセキュリティーの知見を活かした異常検知と攻撃分析・対応を組み合わせた、全国24時間365日のリアルタイムサービスを提供する。

AIやIoTを利用した警備に向けたM&Aが加速する

たとえば工場向け警備では、シーイーシーのセキュリティソリューションに、セントラル警備保障の防犯機器・駆けつけサービスを組み合わせて工場全体を常時監視。工場内への侵入や機器設備の異常・不正操作、データ改竄・流出などの予兆をすばやく検知し、早期対応が可能になるという。

同3月25日にセントラル警備保障はシーティディーネットワークス(CTD、東京都中央区)の株式を51%取得して連結子会社化すると発表した。CTDは電気通信システムや電気設備の設計・施工・メンテナンス業者だ。

セントラル警備保障が目をつけたのは、監視カメラや通信ネットワーク機器などの設計開発・製造・販売を手がける、同社子会社のグラスフィアジャパン。グラスフィアジャパンの画像関連サービスで、機械警備の拡販を強化するのが狙い。株式譲渡は同4月15日の予定という。

企業や個人の防犯意識の高まりという需要増が見込める一方で、人手不足が警備業界にとって深刻な問題になっている。機械警備の強化と充実により、警備業務の省力化や低料金のサービス提供が実現できる。「地域ドミナント」から「自動化」へ。セントラル警備保障はM&Aの舵を大きく切った。

同社は2017年10月に東日本旅客鉄道(JR東日本)と共同で、「子ども見守りサービス『まもレール』」のサービスを開始した。子どもが持つ「Suica」「PASMO」の交通系ICカードの情報を元に、保護者のスマートフォンなどの携帯端末に「利用駅」や「通過時刻」「チャージ残額」が通知されるサービスだ。月額利用料金も月額500円(税別)と安い。

IT技術を利用することで「まもレール」のような安価なセキュリティーサービスも可能に(同社ホームページより)

こうしたIT利用の機械警備は人工知能(AI)による画像認識や、IoT(モノのインターネット)によるセンサー利用や情報収集など、スタートアップやベンチャー企業が得意とする技術が決め手になる。今後はこうした分野の企業とのM&Aが加速しそうだ。

関連年表

セントラル警備保障の沿革
1966 企業の防災・防犯・信用および機密保持を目的として、セントラル警備保障(株)を創立。
1970 ロサンゼルスに出張所を開設。
1971 東京都警備連絡協議会が発足し、代表幹事に。
1971 警務士の専門教育を目的に、警備業界で初めて研修所を開設。
1972 三井物産・住友商事との共同出資により、機械警備を目的とするセントラルシステム警備(株)を設立。 
1972 全国警備業協会連合会が発足し、代表幹事に選ばれる。
1973 建物の清掃・設備保守等のビルメンテナンスを目的とする(株)セントラルプラニングを設立。
1977 システム警備のハードおよびソフトの提供を目的として、ロサンゼルスのロータス社に資本参加。
1979 常駐警備、ならびに機械警備の融合強化を目指して、セントラルシステム警備(株)と合併
1979 関西事務所を開設。
1979 ロサンゼルスにCSP U.S.Aを設立。
1982 本社を新宿NSビルに移転。
1983 大韓海運(株)との共同出資により、韓国ソウルに大韓中央警備保障(株)を設立。
1984 (株)日立ビルシステムとエレベーターの安全管理を含むビル総合管埋システムの充実を目指し業務提携
1986 株式を店頭登録公開。
1986 最新型のホームセキュリティシステム「ファミリーガード」発売。
1988 日本貨物鉄道(株)と共同出資でジェイアールエフ・パトロールズ(株)を設立。
1992 東京都町田市に研修センターを開設。
1992 全国の優良警備会社とセントラルセキュリティリーグ(CSL)を設立。
1993 千葉県千葉市に首都圏指令センターを開設。
1997 シルバー人材活用のためエスシーエスピー(株)を設立。
1997 東日本旅客鉄道(JR東日本)と業務提携基本契約を締結。
1998 関西指令センターを開設。
1998 米国大統領のTBS訪問を東京事業部が警備。
1999 関西研修センターを開設。
1999 首都圏の警送業務部門を分離独立し、東京警送事業部を開設。
2000 (株)ケンウッド他2社との共同出資により、情報セキュリティを目的とする ケイ・フロンティア(株)を設立。
2000 ホームセキュリティシステムを刷新、新「ファミリーガード」を販売開始。
2001 渋谷区笹塚に安全技術研究所を開設。
2001 ホームセキュリティショールーム開設。
2002 ワールドカップ開催に伴う主要ターミナル警備を実施。
2003 機械警備に最先端のITを駆使した、ネットワーク監視システムを導入。
2003 警備業で初めて、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証取得。
2003 GPSを用いた位置情報検索システム「モバイルガード」を販売開始。
2004 東証第一部に上場。
2004 中央事業部にてISO9001認定取得。
2006 (株)インスパイアと共同出資でスパイス(株)を設立。
2007 (株)エム・シー・サービスと共同出資で(株)CSPほっとサービスを設立。
2008 新ホームセキュリティ「ファミリーガード アイ」を販売開始。
2011 総合的なビルマネジメントを目的とするCSPビルアンドサービス(株)を設立。
2014 長野県小諸市の(株)HOPE(長野県パトロールグループの持株会社)と株式譲渡契約を締結し資本提携。
2014 埼玉県上尾市のUDトラックス株式会社の100%子会社である日本キャリアサービス(株)の全株式を取得。
2016 創業50周年を迎え、記念式典挙行。
2016 神奈川県平塚市の株式会社特別警備保障と株式譲渡契約を締結し資本提携201
2017 東日本旅客鉄道(JR東日本)と共同で、「子ども見守りサービス『まもレール』」のサービスを開始
2019 リアルとサイバーセキュリティーを統合したソリューションの提供に向けて、(株)シーイーシーと協業
シーティディーネットワークス(株)の株式を51%取得して連結子会社化

文:M&A Online編集部

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。