引受人確定後に募集株式の発行等を取りやめた事例(東京高判令和5年3月9日)

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東京高裁は、民事再生手続の開始決定を受けたY社との間で、スポンサーとして募集株式の総数引受契約を適法に締結しその後出資の履行をしたX社が、出資の払込前にY社において募集株式の発行に関する取締役会決議を撤回する決議がなされていたと主張するY社に対して、株主たる地位の確認等を求めた事案において、「出資の履行がされる前に、決定機関(Y社においては取締役会)として、上記の総数引受契約において予定されていた募集株式の発行を取りやめる(発行しない。)ことができない状況にあったと解すべき法的根拠は見出し難い」と判示してY社の主張を認め、原審と同様にX社の請求を棄却しました。

従前から、新株発行の決議後に新株発行の取りやめが可能かという論点については、払込期日に至る前(払込期間を定めた場合は、出資の履行前)であれば、いつでも取締役会の決議により新株発行を取りやめることができるというのが通説とされておりましたが、本裁判例は当該通説に従った高裁判決として今後の実務の指標となると考えられます。

パートナー 大石 篤史
アソシエイト 青田 竜

森・濱田松本法律事務所 Client Alert 2024年3月号(第123号)より転載

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