ゼンショーのロッテリア買収で直営店主体からFC化が進むか?

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ロッテリア御茶ノ水駅前店

「すき家」を運営するゼンショーホールディングス<7550>が、2023年4月1日にロッテリア(東京都新宿区)の全株式を取得して完全子会社化します。

ロッテリアはマクドナルド、モスバーガーに次ぐ国内第3位のハンバーガーチェーン(358店舗)で、ゼンショーは子会社化後もロッテリアブランドを一定期間継続するとしています。

ロッテリアは2007年に発売した「絶品チーズバーガー」以降、大ヒット商品に恵まれていないため、今後は直営店のFC化を進めることで収益力を高めるとともに商品開発に経営資源を集中する体制を築くのではないでしょうか。

この記事では以下の情報が得られます。

・ロッテリアのFC比率と売上構成
・絶品チーズバーガーがヒットした背景

3割程度に留まるロッテリアのFC比率

ロッテリアはコロナ禍の2021年3月期に4億5,000万円の純損失を出しましたが、2022年3月期に7億5,600万円の純利益となりました。コロナ禍を乗り越えて黒字化を果たしています。

ロッテリアがマクドナルドやモスバーガーと異なる点は、FC比率が低いこと。マクドナルドは7割、モスバーガーは9割がFC加盟店で占められています。一方、ロッテリアのFC店は3割に留まっています。

■ロッテリア「売上・出店状況:加盟店直営店別」

※フランチャイズ契約の要点と概説より作成

新型コロナウイルス感染拡大により、直営店主体のビジネスモデルはその脆弱性が露わになりました。その典型的な業態がカフェ。9割以上がFCのコメダホールディングス<3543>は2022年2月期に73億500万円の営業利益を出していますが、直営店主体のサンマルクホールディングス<3395>は2022年3月期に35億7,800万円の営業損失を計上しています。

サンマルクはコロナ禍で2期連続の営業赤字となり、2023年3月期も営業利益を出す見通しは立っていません。

ロッテリアはコロナ禍の2021年3月期に4億5,000万円の純損失を出しています。日本マクドナルドホールディングス<2702>は2020年12月期に201億8,600万円、モスフードサービス<8153>は2021年3月期に9億9,700万円の純利益を出しています。損益分岐点が高い直営店主体のロッテリアは、急速な客数減の影響を吸収しきれなかったと考えられます。

直営店は家賃や人件費負担が重く、収益を圧迫する要因となります。FC化を進めるとロイヤリティや食材の卸売がメインとなるため、会社全体の売上高は抑制されます。しかし、加盟店のつなぎ止めやフランチャイズオーナーを見つけてFC店の開発が進めば、安定した収益が得られます。

ただし、フランチャイザーは、フランチャイジーにとってメリットが大きいビジネスを展開しなければなりません。

リヴァンプと組んで誕生した大ヒット商品

フランチャイジーにメリットがあるビジネスとは、本部にロイヤリティを支払っても十分に儲けられるということであり、それだけの売り上げが得られることに他なりません。

その要となるのが商品開発。フランチャイザーはヒット商品を開発し、顧客を店舗に呼び込まなければなりません。

ロッテリアはかつて業績不振に苦しみ、2005年11月に飲食店の再生事業などを行うリヴァンプ(東京都港区)と資本提携を行いました。このとき、リヴァンプは現在の代表取締役社長・湯浅智之氏を、ロッテリアの商品本部執行役員として送り込みます。

そして誕生したのが「絶品チーズバーガー」でした。ロッテリアはエビバーガーやポークなど、競合とは異なる商品ラインナップで差別化を図っていました。しかし、あえて王道のビーフで勝負をしかけます。

商品開発を行った湯浅智之氏は、フランス料理のシェフをプロデューサーに招聘しました。また、マス広告をかける予算に欠けていたため、大学生などと口コミによる販促活動を行いました。

緻密なマーケティング活動を行ったこの商品が大当たりします。

経営が軌道に乗った2010年4月に、ロッテリアはリヴァンプの支援を打ち切りました。しかし、ロッテリアはその後ヒット商品を打ち出すことができませんでした。リヴァンプの支援を受けていた当時は500店舗程度運営していましたが、300店舗台まで縮小しています。

これは予想ですが、ゼンショーは中長期的に直営店からFC店への転換を進めるのではないでしょうか。その布石として、ロッテリアが再びメニュー開発に注力することは間違いないと考えられます。

ゼンショーは輸入牛肉が高騰する中で、「炭火焼きほろほろチキンカレー」という売り切れ続出のヒット商品を世に送り出しました。すき家は牛丼やカルビ丼などのメニューが豊富で、アイスクリーム、プリンといったデザートも充実させています。子供向けの付属品開発にも力を入れています。

牛丼チェーンの中でも、商品開発力を高めてきた会社です。

ゼンショーは国内事業のFC店がほとんどありません。直営店にこだわって拡大してきました。

国内のFCビジネスに本格的に乗り出すという意味でも、ロッテリアの買収は大きな転換点となります。買収後の店舗展開に注目が集まります。

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