新型コロナ「オミクロン株」軽症がほとんどでも油断できない理由

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仮に重症化リスクは低くても油断できないオミクロン株(写真はイメージ)

新たに感染が拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「オミクロン株」だが、世界各国で猛威を振るったデルタ株に比べると重症化リスクが低いことが分かってきた。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も「まだ結論を出すには早い」と前置きしながらも、それを認めている。しかし、まだ油断はできない。

オミクロン株とデルタ株の混合変異株が発生する?

最大の懸念は、過去に感染した人やワクチンの接種を完了した人が感染する「ブレークスルー感染」が多数確認されていることだ。すでに「デルタ株」でも確認されているブレークスルー感染だが、英保健安全局によるとオミクロン株の再感染リスクはデルタ型に比べて3.4~7.6倍も高いことが判明したという。

「オミクロン株に再感染しても、軽症で済むなら問題はないのではないか?」と考えるのは早計だ。感染者が多ければ、コロナウイルスが新たな変異を繰り返す可能性が高まる。次の変異で重症化リスクが高い株が生まれるかもしれないし、既存のワクチンの効果がなくなるかもしれない。

さらに重症化リスクの高いデルタ株とオミクロン株の混合変異株が発生すれば、両方の特徴を兼ね備えたウイルスが流行するおそれもある。決して「空想上の出来事」ではない。2021年10月には、国立感染症研究所が「アルファ株」とデルタ株が混ざったとみられる新変異株が国内で確認されたと発表した。

これはアルファ株とデルタ株の両方に感染した人の体内などで、ウイルスが混ざり合う組み換えが起こって発生したと考えられている。幸い同変異株の脅威は当時大流行していたデルタ株と同等だったため、それほど大きな問題にならなかった。

ブースター接種は「第6波」に間に合わない

しかし、デルタ株とオミクロン株の混合変異株が、どのような特性を持つかは発生するまで分からない。もし、デルタ株のように重症化リスクが高く、オミクロン株ように再感染リスクも高い新たな混合変異株が流行すれば、ワクチン接種で見えたコロナ禍の出口を「ふさぐ」ことになりかねない。

国内での新型コロナ感染拡大の第1波から第5波までは、4カ月周期で起こった。いずれも感染拡大から2カ月後には感染のピークを迎えており、第5波の収束を起点とすると12月中に、オミクロン株の初確認(11月30日)を起点とすると1月末から2月にかけてが第6波のピークとなる計算だ。

オミクロン株の感染予防にはワクチンのブースター(追加)接種が有効なことは分かっている。だが、年内はほとんどの国民はブースター接種を受けられず、1月末から2月時点でも一部の高齢者に限られる。これまでの周期通りに第6波が発生するとしたら、ブースター接種は間に合わない。

オミクロン株の感染拡大が止められなければ、新たな変異種を生み出す「土壌」を作ることになる。仮に第6波で重症化リスクの高い混合変異株が発生せず軽症者がほとんどだったとしても、第7波を引き起こす可能性が高まるのだ。コロナ禍が3年目に突入するのか、その前に収束するのか。世界は今まさにその岐路にある。

文:M&A Online編集部

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