行動制限なしの「ウイズコロナ」時代に突入、どう対応すべきか?

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第7波の自衛手段として感染検査キットを準備しておきたい(写真はイメージ)

コロナ禍が新たな段階に入った。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内新規感染者が7月20日、過去最高を更新。同16日に11万660人だった新規感染者が、3連休を経て15万2000人と約1.4倍に急増した。過去6回の感染拡大を上回る事態だが、政府も自治体も「行動制限はしない」と明言している。こうした新しいフェーズに、どう対応すべきなのか?

死亡率と病床使用率の低下で「行動制限」に踏み込まず

「新たな行動制限は、現時点では考えておりません」。同15日に首相官邸で開いた「第94回新型コロナウイルス感染症対策本部」で、岸田文雄首相は感染急増にもかかわらず「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」などの経済活動を停滞させる感染防止対策をとらない姿勢を改めて強調した。

新型コロナウイルス感染症対策本部で行動規制に慎重な姿勢を示した岸田文雄首相=向かって左から2人目(首相官邸ホームページより)

その理由として挙げているのが、重症者数や死亡者数、病床使用率が低い水準にあることだ。完全なコロナ治療薬は存在しないが、コロナの対処療法スキルや方法論か確立し、重症化する前に患者の免疫力で治癒できるよう症状を緩和することが可能になった。

ワクチンも効果があらわれる2回目の国内接種率が81.4%まで上がり、重症化リスクが低下していることも影響している。つまり「感染拡大を放置しても、死者や重傷者の発生を最小限に抑え込める」との見通しから、過去のような行動制限をとる緊急性はないと判断したということだ。

一方で「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」といった行動制限を伴う措置は、経済を冷え込ませるだけでなく、休業や営業時間短縮に伴う補償金などで膨大な予算が必要になる。政府や地方自治体にとっては財政上の負担が重く、「行動制限と補償金の年中行事化」は何としても避けたい。

一方、国民も感染拡大という「痛み」は伴うが、「自粛疲れ」や「コロナ慣れ」に加えて経済を回さなくては自らの生活にも影響が出ると痛感している。だから行動制限に踏み切らない政府を「対策が後手に回った」と非難しなくなった。

「ウイズコロナ」の社会実験に対応せよ!

感染拡大の「第7波」到来により、日本は「ウイズコロナ(コロナとの共生)」の実験場となったのだ。ただ、この社会実験には不透明な要素も多い。当初、政府はワクチン接種による「集団免疫」でコロナ感染を封じ込もうとしたが、「オミクロン株」の登場で過去に2回以上のワクチン接種を完了していても感染する「ブレークスルー感染」が拡大。ワクチンによる封じ込めは難しくなった。

死亡率と重症化率の低下やワクチンの副反応が若い世代ほど激しいとの口コミから、10代から30代の3回目接種率は3〜5割台に留まっている。第7波の感染者で最も多いのは20代で、ワクチン接種率が低い年齢層を媒介に感染が拡大している可能性もある。

医療現場からは現在の主流になっている「オミクロン株」の「BA.5」は、第6波の「BA.1」や「BA.2」よりも発熱、倦怠(けんたい)感、のどの痛みが激しいとの指摘も。一方でWHO(世界保健機関)は、現時点で「BA.2」と比べて重症化しやすいという証拠はないとしている。

いずれにせよ「BA.5」の感染拡大で入院を必要とする患者が多発すると、医療現場は過去の感染拡大と同様に混乱が生じるのは避けられない。夏の旅行シーズンでは大勢の観光客が空港や駅に押し寄せ、京都の「祇園祭」や青森の「ねぶた祭り」など全国から観光客を集める大規模祭事も復活し、感染拡大に歯止めはかかりそうにない。

過去にないハイペースの感染拡大だけに、死亡率や病床使用率は一気に急上昇するだろう。その時になってからの行動制限は無駄であり、効果も限定的なものとなる。

過去の感染拡大期においても、「入院先が見つからない」「宿泊施設に空きがなく、自宅療養を余儀なくされた」「保健所に電話がつながらない」など、ピーク時に行政のサポートが届かなかったケースが多数報告された。

第7波でも同様の事態が生じる可能性が高い。1日も早く治療を始めてもらうためのコロナ検査キットや解熱剤をあらかじめ準備したり、自宅療養に備えて独居者の場合は身内や知人に支援してもらえるよう事前に連絡したり、家庭内隔離の準備をしたりするなど、自衛手段を講じておきたい。

文:M&A Online編集部

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