「ぶっちゃけ、0円でずっと使われても困る」楽天グループ<4755>の決算発表会見で、三木谷浩史会長が楽天モバイルが提供している「通信料金0円プラン」廃止について「本音」を漏らした。経営者としては当たり前の感想だが、そもそも0円プランの利用者の多くが有料プランに移行すると期待していたとしたら、あまりに「甘かった」と言わざるを得ない。なぜか?
結論は簡単だ。0円プランを選択するユーザーの大半は、有料プランに乗り換える気がない。そもそも本格的にスマートフォン(スマホ)を利用しようとするユーザーは、初めから有料プランで契約している。通信事業者(キャリア)が「お試しで使ってもらい、気に入ったら有料プランへ移行してくれるのではないか」と期待してもムダなのだ。
0円プランのユーザーは「無料で済む使い方」を心得ており、ほとんど有料課金へは踏み出さない。そうしたユーザーのほとんどは0円契約の回線を2台目以降のスマホで利用しており、メインのスマホは有料プランで契約している。新型スマホを購入して余った古いスマホで0円プランを契約するケースが多いようだ。
では、そうしたユーザーは0円プランで何をしているのか?0円で利用できるデータ量は、楽天モバイルで月間1ギガバイト。動画や音楽どころかウェブページを頻繁に見ていると、0円枠を突破してしまう。無料で収めるには、文字情報や小容量のデータ通信に限られる。
具体的な使い方としては、LINEなどの文字情報によるSNS利用がある。LINEはスマホの電話番号とIDがひも付けられており、1台のスマホで複数のアカウントを利用するのは難しい。
しかし、0円プランで契約した2台目のスマホを使って新たなIDを取得すれば、無料で複数のアカウントを取得し維持できる。文字でのやりとりが中心ならば、データ通信量も無料枠に収まるだろう。
iPhoneやセルラーモデルのiPadなら.回線契約があれば「探す」機能を使って詳細な位置情報を得られる。鞄などに使わなくなったiPhoneをしのばせておけば、罡き忘れた場合にどこにあるのかが一目で分かる。
ビデオ通話アプリ「FaceTime」の自動着信機能を利用すれば、自宅などのスマホスタンドに立てかけておき、外出先で様子を知りたい時に呼び出せば監視カメラ代わりにもなる。頻繁に使うと無料のデータ容量を超えるが、気になった時に短時間見るだけならば大丈天だろう。
0円プランは楽天モバイル以前にも存在した。ソニーネットワークコミュニケーションズ(So-net)は2015年12月から毎月500メガバイト(0.5ギガバイト)まで無料となる「0 SIM」を提供していたが、2020年8月に同プランを廃止した。
同サービス終了後は「0 SIM」ユーザーの受け皿として月額330円からの「お試しプラン」が用意されたが、データ容量は月間200メガバイト(0.2ギガバイト)と半分以下に改悪。同社が「0 SIM」ユーザーのつなぎとめに、それほど熱心でなかったことが見て取れる。0円ユーザー層が優良顧客になる可能性は低いだけに、当然の対応かもしれない。
残る0円プランはKDDI<9433>がauブランドで提供する「povo2.0」だけになる。同プランで無料なのは128Kbps(0.128Mbps)という超低速通信のみ。それでも文字情報によるSNS利用や位置情報の検知には利用できる。180日間無料利用が続くと自動解約になるが、半年に1度ばかり330円の24時間データ使い放題か390円の1GBトッピングなどの有料オプションを利用すれば回避できる。
これをやられたら、KDDIにとって「利益を生まない」ユーザーが急増しそうだ。すでに楽天モバイルの0円プラン利用者が「povo2.0」へ大量に流れているとの情報もある。KDDIによると、楽天モバイルの0円プラン廃止を発表した週の同プランへの申込件数は前月同週の2.5倍に増えたとという。
0円ユーザーの急増を受けて、KDDIが「povo2.0」を廃止したり有料オプションの最低利用回数を引き上げたりするなどの対策をとる可能性も高い。0円でスマホを利用できる期間は、そう長くなさそうだ。
文:M&A Online編集部
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