感染は下火になったのに、「コロナ倒産」が急増する理由とは

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コロナ禍の出口は見えたが、飲食店の経営は苦境が続く(写真はイメージ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大も一息つき、政府が観光支援事業の「Go To トラベル」の再開に動き出したり、全日空(ANA)が2020年3月から実施してきた羽田発着の国内線減便措置を7月に全面停止すると発表したり、「脱コロナ」に向けた動きが加速している。それにもかかわらずコロナ関連の倒産が急増しているという。なぜか?

今年のコロナ倒産は「超ハイペース」

東京商工リサーチによると、6月9日16時時点で2022年の負債1000万円を超える倒産は903件となった。コロナ関連倒産は2020年が843件で、2021年は1718件と倍増している。今年に入ってもその勢いは止まらず、5月までの累計で前年同期比29.2%増の817件に。6月も9日までに86件と、月間260件(年換算では3000件)を超えるハイペースだ。

2020年以降のコロナ関連倒産の累計は3645件に達し、業種別では来店客の減少や休業要請を受けた飲食業が571件と最も多い。次いで建設業の380件、アパレル製造・販売の265件、飲食料品卸売業の152件、宿泊業の133件が続く。いずれもコロナ禍が収束すれば、業績のV字回復が見込める業種ばかりだ。

それにもかかわらず、コロナ禍の「出口」が見えてきたところで力尽きる企業が増えていることになる。東京商工リサーチによれば(1)経済活動が活発化すれば、運転資金の確保が経営課題として浮上する(2)アフターコロナへの対応に伴う資金需要が発生するーといった背景をあげている。

急激な物価高が「再スタート」のブレーキに

すでに業績不振の長期化で過剰債務に陥った企業が増えており、息切れやあきらめによる脱落に加えて営業再開に向けた資金難による倒産が増えるというわけだ。政府主導の「中小企業活性化パッケージ」の関連施策も本格化する見通しだが、コロナが再流行する可能性も残っており、これ以上の営業継続と資金調達に二の足を踏む企業が増えているようだ。

さらに足もとの急激な物価高も大きな脅威だ。日本銀行が6月10日に発表した5月の企業物価指数は前年同月比で9.1%上昇した。石油・石炭などのエネルギー価格の上昇が顕著だが、あらゆる製品やサービスの価格が上昇している。コロナ禍が落ち着いて国内経済が平常化すれば、需給が逼迫(ひっぱく)して値上がりが進む。

仕入れ価格やエネルギーコストの増加は、コロナ禍からようやく立ち上がったばかりの業種にとっては「致命傷」になる。仮にコロナ感染が完全に収束したとしても、企業経営にとっては大きな不安材料だ。コロナと企業との戦いはまだまだ続く。

文:M&A Online編集部

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