ニトリ、DCMがTOBで奪い合う「島忠」ってどんな会社?

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ホームセンター(HC)中堅の島忠<8184>が2020年11月16日、同業大手のDCMホールディングス<3050>と合意していたTOB株式公開買い付け)への賛成を撤回し、代わって家具日用品製造販売チェーン最大手・ニトリホールディングス<9843>からの買収提案を受け入れる意向を表明した。

家具製造が島忠の起源

DCMは同日までとしていた買付期間(30営業日)を12月1日まで10営業日延長すると発表した。が、DCMは1株4200円とする買付価格を変更しておらず、同5500円の買付価格を提示するニトリの「勝ち」は決まったようなものだ。争奪戦はニトリの勝利で終わりそうだが、業界が違うとはいえ、それぞれのトップ、ナンバー2が奪い合った島忠とはどんな会社なのか?

島忠は1893年に創業者の島村忠太郎氏が埼玉県春日部市で開業した「島村箪笥製造所」が源流。同市は静岡県藤枝市、新潟県加茂市と並ぶ「桐たんすの三大産地」で、12月1日付で大塚久美子社長が辞任し、創業者一族支配が終わる大塚家具の創業の地でもある。

1969年に「家具の島忠」を設立、1979年5月に島忠に社名変更し、東京店頭市場に新規上場した。1978年に出店した「エッサン川口店」(埼玉県川口市)でHC業界に参入し、業容を拡大。1982年に東京証券取引所2部、1991年に同1部へ上場を果たしている。

ニトリとは「家具つながり」

島忠の業態としてはHCだが、元々が家具製造業だけに家具販売が強く家具専門店もある。ニトリが島忠に対抗TOBを仕掛けたのも、家具販売が祖業で現在も主力商品であることから「自社との親和性が高い」と判断したのが理由の一つという。

そのほかにもHC専門店や家具とHCの複合店、さらにはインテリア雑貨、エクステリア、リフォームまでを取り揃えた複合店も存在するなど、店舗バリエーションも豊かだ。家具・HC複合店は「島忠」「エッサン」、大型店舗「Home's(ホームズ)」ブランドで展開している。

島忠の2020年8月期売上高は1535億4000万円で、業界7位。営業利益は95億9800万円、経常利益は100億9400万円、当期純利益は64億2200万円だった。売上高営業利益率は6.2%で、ニトリの16.7%には及ばないが、一度はTOBで合意したDCMの4.8%よりも高い。これは家具の売上比率に左右されているものと考えられる。HCよりも家具販売の方が利益率が高いといえそうだ。

国内ホームセンター売上高ランキング (単位:億円)
順 位 社 名 売上高
1 カインズ 4410
2 DCMホールディングス 4373
3 コーナン商事 3746
4 コメリ 3485
5 ナフコ 2177
6 LIXILビバ 1885
7 島忠 1535
8 アレンザホールディングス 1376
9 ジョイフル本田 1249
10 アークランドサカモト 1126
11 ケーヨー 1076

HC業界は全国的な再編が続いており、大手は共同仕入れやプライベートブランド(PB)製品の開発などで値下げや利益率向上を実現している。中堅HCは単独の生き残りが難しくなりつつあり、業界10位のアークランドサカモト<9842>は同6位のLIXILビバ(現ビバホーム)を買収、同11位のケーヨー<8168>はDCMの持分法適用会社となっている。

文:M&A Online編集部