香川編集長降板で注目される自社メディア「トヨタイムズ」の行方

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「社会的に許されざる行為であり、大変残念に思います」とトヨタ自動車<7203>を困惑させているのが、「2019年に銀座の高級クラブでホステスにセクシャルハラスメントをはたらいた」と報じられた俳優で歌舞伎役者の香川照之氏だ。

香川編集長、事実上の「更迭」に

舞台にテレビにコマーシャルにと大活躍の香川氏だけに、スキャンダルの波紋は大きく広がっている。中でもトヨタは豊田章男社長肝いりのオウンド(自社)メディア「トヨタイムズ」の編集長に起用しており、対応が注目されていた。

9月1日、にわかに事態が動く。「世間の皆さまの反応を見ていても、全く理解されることではない」(長田准トヨタ執行役員渉外広報本部本部長)として、香川氏が登場するテレビコマーシャルの放送を見合わせたと明らかにしたのだ。年内までの香川氏との出演契約は更新しない方針だ。

トヨタイムズでも香川編集長が登場するコンテンツにはアクセスできない状態になっている。トヨタイムズはトヨタが自ら所有し、消費者に向けて直接情報を発信するニュースサイト。2019年に従来の広報・宣伝活動では不十分と考えた豊田社長が立ち上げた。

トヨタイムズ開設の背景には、自社の意にそわない報道をするマスメディアに代わる「自前のニュースサイト」をつくる狙いもあったという。

香川編集長が登場するコンテンツは9月1日にアクセスできなくなった(トヨタイムスより)

オウンドメディア戦略見直しは避けられない

トヨタイムズ編集部には香川編集長のほか、元テレビ東京アナウンサーの森田京之介氏と元テレビ朝日アナウンサーの富川悠太氏が在籍する。香川編集長が降板したことで、トヨタイムズの編集長が交代する可能性は高そうだ。

ただ、世間での知名度は香川氏が圧倒的に高いのは言うまでもない。スキャンダルが明らかになった8月26日時点でトヨタが香川氏の降板について「今後を注視する」としていたのも、トヨタイムズへの影響を危惧していたからだろう。

シミラーウェブによると、トヨタイムズの最近の月間ページビュー(PV)は約25万5000PV。サイトへの訪問数は2022年2月には約27万3000件あったが、4月には約13万9000件にまで落ち込んでいた。翌5月には23万3000件まで盛り返したが、6月に再び20万件を切り、7月には14万5000件に下がっている。

このところの訪問数の伸び悩みに加えて、集客力の高い香川編集長のスキャンダルと降板が重なり、トヨタとしてもオウンドメディア戦略を見直さざるを得なくなりそうだ。

文:M&A Online編集部

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