アマゾンが買収したサブスク医療サービス「ワンメディカル」とは

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米アマゾンが医療サブスクリプションサービスを提供する米ワン・メディカル(One Medical)を約39億ドル(約5320億円)で買収すると発表した。1株当たりの取得価格は18ドルで、直近の終値に76.8%のプレミアムを乗せている。今回のM&Aは医療事業の強化が狙いだが、このワン・メディカルはどんな会社なのか?

24時間年中無休で遠隔診断が受けられる

ワン・メディカルは2007年に米サンフランシスコで診療所としてスタートしたプライマリーケア(日常医療)ベンチャー。診療所の医師が契約者から健康不安などの相談を受け、状態に応じて適切な処置や病状が深刻な場合は専門医を紹介するプライマリーケアサービスを提供する。

全米で188カ所の医療拠点を展開しているが、モバイルアプリなどによる24時間年中無休の遠隔診断を提供する会員制プライマリケアサービスに乗り出したことで急成長した。年額199米ドル(約2万7000円)のサブスクリプションサービスだ。

法人契約が多いのも特徴で、米グーグルや米民泊仲介サービス大手のエアビーアンドビーはじめ、8000社以上の従業員向け遠隔医療サービスなどを提供している。

4兆ドルの米医療産業市場の争奪戦に

ワン・メディカルは2018年に、米プライベート・エクイティ(PE)ファンドのカーライルグループから3億5000万ドル(約478億円)の出資を受けている。米アルファベット傘下のグーグルベンチャーズなどの支援を受け、2020年1月には米ナスダック市場に上場した。

アマゾンは2018年にオンライン薬局の米ピルパックを買収。2020年11月にオンライン薬局サービスの「アマゾン・ファーマシー」の事業を始めると発表した。2019年にはヘルスケアサービス「アマゾン・ケア」を立ち上げており、ワン・メディカルの買収で同サービスを拡充する。

米医療産業は4兆ドル(約546兆円)市場で、アマゾンだけでなく米アップルやグーグルなども心電図や脈拍、血中酸素飽和度などの健康データを収集するウェアラブル端末を発売するなど参入が相次いでいる。

ちなみに「ワンメディカル」はブランド名で、会社名は1ライフ・ヘルスケア(1Life Healthcare,Inc.)。同様のプライマリーケア事業を展開する、英ワン・メディカルグループ(One Medical Group)とは全くの別会社だ。

文:M&A Online編集部

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