早稲田大学大学院経営管理研究科の鈴木一功教授が「企業価値評価 入門編」を発刊した。ファイナンスの専門家でない企業の財務担当者や、これからM&Aなどを学ぼうとする人向けで、会計の専門知識や複雑な数式の知識などが無くても読むことができる。
構成は第1章から第9章までが基礎理論で、企業価値と現在価値の関係や現在価値と割引率の関係、ファイナンス理論におけるリスクなどについて解説。10章から14章までが実務で、モスフードサービスを事例に業績分析や業績予想、資本コストの推定、企業価値の算定などのやり方を示した。
鈴木教授が2004年に発行した「企業価値評価 実践編」は投資銀行の担当者などのプロ向けで、3社の事例を基に企業価値評価の手法をまとめた。今回の「企業価値評価 入門編」から、この「企業価値評価 実践編」に進むことも可能。
鈴木教授は今回の書籍について「コーポレートファンナンス理論のうち、企業価値に絡んでいる部分だけを切り取った」と説明する。その理由について「コーポレートファンナンスに関しては欧米系書籍にいい物があるが、全部で2000ページほどもある。これをすべて読めというの拷問のようもの」ときっぱり。そこで「本当に必要なところだけを抜き出し150ページほどにまとめた。いわば既存のコーポレートファイナンス教科書のダイジェスト版のような物にした」という。
鈴木教授は、ある大手銀行のM&Aの部署に配属になった新人研修を行っている。そこで行っているのが、今回の書籍の内容。「これを1冊読めば一通りの理屈が分かるようにした。投資銀行が作成する資料の作りが分かるようになりたい人は、これ1冊で理解できるようになる」と自信を示す。
さらに「理論の部分は今、議論になっている問題にこだわって書いた。普通のコーポレートファンナンスの本では触れないような論点、例えば『余剰現金をどう取り扱いますか』といったようなことに触れている」という。
「実務をやっていると結論が先にありきで、理論をいろんなところから持ってくるが、結果として整合性が取れていないこともあり、気になっていた。今回は理論に一本筋を通しておこうと思って書いた」と熱い思いも込められている。
ダイヤモンド社刊、2018年10月24日発行。定価2400円(税別)、A5並製、272ページ。
【鈴木一功 早稲大学大学院経営管理研究科教授】
1986年東京大学法学部卒業。同年富士銀行(現みずほ銀行)に入社し、主にM&A部門のチーフアナリストとして、企業価値】 企業価値の算出法は、年買法、DCF法、類似会社比準法等があるが (各項目参照)、いず... →続きを見る ">企業価値評価モデル開発等を担当。INSEAD(欧州経営大学院)よりMBA取得。その後、ロンドン大学(London Business School)よりPh.D.(Finance)を取得。2001年中央大学国際会計研究科教授等を経て、2012年より現職。「証券アナリストジャーナル」編集委員、みずほ銀行コーポレートアドバイザリー部の企業価値】 企業価値の算出法は、年買法、DCF法、類似会社比準法等があるが (各項目参照)、いず... →続きを見る ">企業価値評価外部アドバイザー【アドバイザー】 M&Aの仲介及び手続き上の助言を行う会社およびプレイヤーのこと。 機能としては相手... →続きを見る ">アドバイザーも務める。熊本県出身。
著書に「検証 日本の敵対的買収」(共著・日本経済新聞出版社)、「MBAゲーム理論」(ダイヤモンド社)、「企業価値】 企業価値の算出法は、年買法、DCF法、類似会社比準法等があるが (各項目参照)、いず... →続きを見る ">企業価値評価(実践編)」(ダイヤモンド社)など。
文:M&A Online編集部