自業自得?マスク氏を大量解雇に走らせた「ツイッター広告危機」

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大混乱となった解雇の背景にツイッターの広告事情が…(Photo By Reuters)

イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が大鉈(なた)を振るった米ツイッターの超大型解雇が混乱を招いている。同社は11月4日に全世界で働く従業員約7500人のうち、約半数に当たる約3700人にメールで解雇を通知した。が、6日には早くも一部従業員に復帰を要請するなど、社内の混乱ぶりが明らかになった。なぜマスクCEOは大量リストラを急いだのか?

マスクCEOの方針転換で優良広告主が相次いで広告停止

最大の要因は広告料の減収だ。マスクCEOはトランプ前大統領のツイッターアカウントを復活する意向を示していた。これに対して独アウディや米ファイザー、米食品メーカーのゼネラル・ミルズなどの大手企業が一時的にツイッターでの広告を停止すると表明。人種差別発言やフェイクニュースの発信源になるようなら、本格的な撤退も示唆している。

事実、米国では8日の中間選挙で露出を増やしているトランプ氏の影響か、ツイッターで差別的な投稿が急増しているとの指摘もある。当のトランプ氏はツイッターでアカウント凍結が解除されても、自前のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を利用し続けると明言している。

だが「トゥルース・ソーシャル」は財政難が指摘されており、トランプ氏がツイッターに復帰する可能性もありそうだ。そうなるとトランプ支持派のアクセスは増えるだろうが、それでキャッシュが生まれるわけではない。それどころか、人権意識が高い企業の広告離れが顕著になるだろう。こうした企業の多くは高級ブランド商品を扱っている優良企業で、同社の広告営業には大きな痛手となる。

広告補完の有料サービスも「裏目」の可能性が

マスクCEOは総額440億ドル(約6兆4500億円)に上ったツイッター買収資金の一部を、同社の資産や将来のキャッシュフローを担保とする融資で調達している。そのため広告収入の減少は、融資返済にはマイナス材料だ。マスクCEOは大量解雇で人件費を圧縮し、返済原資に充てると見られている。

併せて広告を補完する収入源として、米国で提供している有料サービス「Twitter Blue」を強化する。これまでは社会的影響力がある個人や団体に限定していた、ユーザーが本人であることを証明できる「認証バッジ」の付与も含まれるという。

有料化に移行するとお金を払えば誰でも「認証バッジ」が入手できることになり、本来の認証機能を果たせなくなるとの指摘もある。「認証バッジ」の玉石混交化で、ツイッターでの情報発信を手控える個人や団体が増えるかもしれない。そうなればツイッター内のコンテンツ品質が劣化して、アクセス数が伸び悩む懸念もある。マスクCEOの改革が広告減収の穴埋めになるかどうかは未知数だ。

マスクCEOは手っ取り早いリストラによる経費削減で苦境をしのぐ構えだが、人員半減に伴うトラブルの発生やサービス品質の低下がツイッターのユーザー離れやブランドイメージの毀損(きそん)につながるリスクもある。

コロナ禍で好調だったソーシャルメディア業界全体が業績不振に苦しんでおり、フェイスブックを運営する米メタは業績不振から従業員約8万7000人のうち、数千人の解雇を検討していると報じられた。こうしたソーシャルメディアに対する逆風下で経営が大きく混乱すれば、立て直しは容易ではない。

文:M&A Online編集部

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