いよいよ新型コロナワクチンの製造に乗り出す「武田薬品」他のワクチンとどこが違う?

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武田薬品工業<4502>は2021年12月16日に、米国の製薬会社ノババックスが開発中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造販売承認申請を厚生労働省に行った。

新型コロナウイルスの遺伝情報を基に作ったウイルスのたんぱく質の一部を体内に入れる「組み換えたんぱくワクチン」で、武田薬品が製造し、2022年初頭にも供給を始める予定という。

日本ではmRNA を用いるファイザーとモデルナの2種と、アデノウイルスを用いるアストラゼネカ1種の合わせて3種のワクチンが承認されているほか、現在風邪などのウイルスを用いるジョンソン・エンド・ジョンソンの1種が申請中のため、今回のワクチンが5種目となる。

組み換えたんぱくワクチンは他のワクチンとどのように違うのだろうか。

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安全性が高く副作用も少ない

ノババックスのワクチンは大腸菌などの生物に新型コロナウイルスの遺伝子を組み込み、新型コロナウイルスのたんぱく質を作り出したうえで、このたんぱく質をワクチンとして投与する。

組み換えたんぱくワクチンの製造については、すでにB型肝炎やインフルエンザなどで、実績があるため安全性が高く副作用も少ないとみられている。

ノババックスのワクチンを健康な日本人成人を対象に0.5ミリリットルを21日間隔で2回投与したところ、新型コロナウイルスに対する強い免疫反応が誘導され、重い副作用は認められず、忍容性(耐えられる副作用の程度)も良好で、有効性は90%ほどだった。

武田薬品はノババックスから技術移転を受け、国内で年間2億5000万回分を製造する体制を整備する計画で、日本政府との間で、2022年初頭から年間1億5000万回分の供給契約を結んでいる。

mRNAとウイルスタイプが先行

すでに新型コロナウイルスワクチンとして、日本で特例承認を取得しているのは米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカ製の3種類で、現在申請中なのが、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの1種。

ファイザーとモデルナのワクチンは、たんぱく質を生成するための情報を運ぶ遺伝子(mRNA)を用いる。新型コロナウイルスがヒトの細胞内に入る際に必要となるスパイクたんぱく質を作り出すmRNAを体内に入れ、作り出されたスパイクたんぱく質と結合することでスパイクたんぱく質の機能を奪う、別のたんぱく質を体内で作ることで、感染を防ぐ仕組みだ。

アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンは、複製できないように処理したチンパンジー由来のアデノウイルスを用いる。このウイルスに新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作り出す遺伝子を組み込み、体内に入れることで、ファイザーやモデルナ製ワクチンと同じように、感染を防ぐことができる。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、無害化した風邪などのウイルスを用いる。このウイルスに新型コロナウイルスの遺伝子を組み込んで、体内に入れることで、他のタイプのワクチンと同様に感染を防ぐ仕組みで、1回の接種で済むのが特徴だ。

ノババックスの組み換えたんぱくワクチンは、これまでのmRNAやウイルスを用いたワクチンとはタイプが異なる。日本政府がノババックスのワクチンをどのように使用するのかは未定だが、国民の選択肢が増え、ワクチン供給に余裕が生じることになるのは、間違いなさそうだ。

新型コロナウイルスワクチンの開発企業 ワクチンタイプ
ファイザー mRNA
モデルナ mRNA
アストラゼネカ ウイルス
ジョンソン・エンド・ジョンソン ウイルス
ノババックス 遺伝子組み換え

文:M&A Online編集部