4度目の緊急事態宣言が出されたにもかかわらず、2021年7月28日には東京都の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規感染者が過去最高の3000人を超えた。東京オリンピックとの因果関係も取り沙汰され、開催を強行した菅義偉政権への風当たりは強まる一方だ。「起死回生」の妙手はあるか?
外部との接触を一切断つことでコロナ感染を防ぐ「バブル方式」で守られているはずの五輪選手村でも感染者が出ている。7月27日には選手村で選手2人を含む関係者7人の感染が確認。五輪関連の新型コロナ感染者は累計で155人となった。
選手村には「発熱外来」を設けており、ここで陽性が確定した場合は大会組織委員会が用意した宿泊療養施設や病院へ入る。TBSによると4月の時点で都内10カ所、都外20カ所の病院と五輪関係者の入院に向けて交渉を進めていたというが、詳細は不明だ。
7月17日にナイジェリア選手団関係者の感染が判明して都内の医療機関に入院したことは明らかになっているが、現時点で五輪関係者の入院者数は発表されていない。
東京五輪は国際オリンピック委員会(IOC)の強い反対があって、政府や東京都が中止を決断できなかったようだ。朝日新聞によると開会式の簡素化ですらIOCは多額の放映権料を負担する米テレビ局との契約をたてに「違約金が払えるのか」と突っぱねたという。
感染者が相次いで競技が成り立たない事態となれば話は別だが、競技に支障がない限りIOCも途中打ち切りは許さない。「緊急事態宣言下での五輪開催」で批判を浴びる菅政権が打てる唯一の手段は、8月24日に開幕する東京パラリンピックの中止だ。
パラリンピックは主催団体がIOCとは別組織の国際パラリンピック委員会(IPC)で、政治的な影響力は弱い。広告スポンサーは存在するがオリンピックのような巨額の放映権料は発生しないため、中止の障壁も低いだろう。
東京パラリンピックについては、無観客にするかどうかの判断が8月8日の五輪閉幕後に持ち越されている。コロナ「第5波」の感染拡大が8月上旬まで続けば、無観客を飛び越えて中止の判断も十分にありそうだ。
菅政権としては感染拡大が続く中で、五輪よりも国民の注目度が低く、メダル数が支持率に結びつきにくいパラリンピックを強行して、世論のさらなる反発を招くのは避けたいのが本音。政府が東京パラリンピックの中止に踏み切ることで、「国民の安心・安全が第一」をアピールする可能性も十分にある。
文:M&A Online編集部
関連記事はこちら
・東京五輪、選手村クラスターで前代未聞の「打ち切り」になる?
・【失敗の本質】インパールどころではない76年前のオリンピックとコロナ危機