「スリランカ」と日本企業のM&A、電通を最後にここ5年途絶える

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スリランカの国旗

経済危機による政情不安が続くスリランカ。帝国データバンクによると、日本からの進出企業は180社(7月時点)を数える。こうした中、日本企業とのM&A取引は一体、どの程度あるのだろうか。

電通、ベルーナなど6件

M&A Online編集部が上場企業の適時開示情報をもとに2013年以降の10年間を調べたところ、スリランカ関連でM&Aに該当する取引は6件あった。この間、日本企業がかかわる海外M&Aはおよそ1700件で、スリランカ関連は全体の0.5%にも満たない。

実は、スリランカ関連のM&Aは2017年3月、電通グループ<4324>が現地有力広告会社のグラント・グループ(現・電通グラント)を子会社化すると発表した案件を最後に、ここ5年間途絶えている。

同じ2017年の2月には、カタログ通販大手のベルーナ<9997>が現地の不動産開発会社を傘下に収めた。

スリランカ関連のM&A6件中、製造業は1件。こちらは日本企業同士の案件だが、電池メーカーのFDK<6955>が2015年2月、光通信部品を製造するスリランカ子会社を湖北工業<6524>に売却した。

湖北工業はアルミ電解コンデンサー用リード線端子事業に続く第2の柱として光通信部品事業を位置付ける。その生産拠点の一つがFDKから買収したスリランカ子会社「KOHOKU LANKA」。

湖北工業「従来通り通常生産を継続」

湖北工業は現地での操業状況などについて、従来通り通常生産を継続しており、従業員の出勤状況や物流にも問題は生じていないとするアナウンスメントを発表。引き続き、情報収集や従業員の安全確認などを行い、不測の事態に備えた対策を講じたいとしている。

介護・医療向け人材紹介サービスのエス・エム・エス<2175>は2014年に患者向けに医師とのアポイントメント(予約)サービスを提供する現地eChannellingを傘下に収めたものの、2年後、アジア事業の見直しを理由に売却した。

スリランカは2009年に25年に及ぶ内戦が終結。2012年には過去最高の9.1%の経済成長を達成した。観光業の伸びなどに支えられ、その後も堅調な経済成長が維持した。しかし、2020年以降、コロナ禍の影響で主力産業の観光業が打撃を受けたうえ、深刻な外貨不足や燃料不足が続くなど、危機的な経済状況に陥っている。

◎日本企業とスリランカ企業のM&A(2013年以降の適時開示ベース。年は発表年)

2017年 電通グループ、有力広告会社「グラント・グループ」を子会社化
ベルーナ、不動産開発会社LAKE LEISURE HOLDINGSを子会社化
2016年 昭和ホールディングス、スリランカ企業傘下でミャンマーで小口金融事業を手がけるBG MICRO FINANCEを子会社化
エス・エム・エス、医療関連サービス会社eChannellingを売却
2014年 FDK、光部品事業のスリランカ子会社を湖北工業に売却
エス・エム・エス、医療関連サービス会社eChannellingを子会社化

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文:M&A Online編集部