中小企業政策、エクイティ・ファイナンス活用などを促進へ

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金融小委員会で資金調達などの課題を整理

中小企業庁は3月30日、中小企業政策審議会金融小委員会(委員長・家森信善神戸大学経済経営研究所教授)の第2回会合を開いた。中小企業の成長を支える新たな資金調達のあり方とコロナ禍で増大する債務への対応、金融機関などによる経営支援をめぐる課題を整理した。

新規事業展開などに必要な資金調達に関しては、成長志向の中小企業に対するエクイティ・ファイナンス(新株発行による資金調達)の活用が有効な場面・事例や仕組みなどを広報する手立てが必要とした。エクイティ・ファイナンスを受けやすくする上で、中小企業では不十分な場合も少なくないガバナンスや情報開示への対応も俎上に載せる。

中小企業と投資家の接点を提供、強化する一方では、無議決権株式などの活用促進といった方策で経営関与に対する懸念の緩和・解消を目指す。低い投資リターンを許容する投資家による支援を誘導しつつ、投資家側の投資回収(EXIT)の難しさの軽減も図る。

M&A活性化へサーチファンドを推進

M&A市場の活性化に向けては、経営者人材を確保するために必要なインセンティブが不足している点に着目。後継者不在の中小企業と高度な経営者人材をマッチングさせる手法の1つとして、着任後の企業の成長がインセンティブとなるサーチファンドの取り組みを推進すべきとした。

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高度なM&A、中小企業と投資家のギャップ解消へ

さらに、大幅な経営革新に乗り出す高度なM&Aは「中小企業の成長性・速度」と「投資家側の期待リターン・投資期間」のギャップが生じやすいため、長い投資期間と低い投資リターンを許容する投資家による支援の拡大策を模索する。国の「中小M&A推進計画」は「中小機構のファンド出資事業で他の投資家に優先配分を行える特例措置の創設を検討する」と示していることから、本措置を導入した際の有効性と市場に与える反作用を見極める。

また、近年は中小企業自身が競争力を強化するため、あるいは投資家側が中小企業に合った投資形態を提供するため、持株会社などの方式で長期投資を行うケースも見られるが、こうした取り組みの長短所も洗い出す。

「中小企業活性化パッケージ」支援策も

増大する債務への対応では、経済産業省が金融庁、財務省と2022年3月に策定した「中小企業活性化パッケージ」の施策展開に必要な対応を詰める。パッケージではコロナ禍の資金繰り支援を継続しながら、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を想定しており、日本政策金融公庫や信用保証協会などの政府系金融機関が率先して着手するべき取り組みも検討する。

金融機関などによる経営支援に関してはリーマン・ショック時の保証制度、コロナ禍でのゼロゼロ融資と伴走支援型特別保証制度の評価も踏まえて検証し、同じくコロナ禍に伴い発動されたセーフティネット保証4号の見直し方針についても論議する。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
中小企業庁:中小企業政策審議会金融小委員会(第2回)
配布資料中小企業庁:金融小委員会の設置について(資料3)