組織コンサルタント事業を展開する識学<7049>は2023年1月にM&A仲介事業に参入した。半年ほどが経った現在、事業はどのような状況にあるのか。事業の位置づけや将来展望などについて、同社の安藤広大社長にお聞きした。
-2023年1月に M&A仲介事業に参入され、半年ほど経ちました。現状をお教え下さい。
我々のM&A仲介事業は買い手企業を識学導入企業に限定しているところが一番の特徴です。識学導入企業や識学導入企業で働く人数を増やしたいという思いがあります。識学導入企業によるM&Aが成立すると結果的に識学導入企業で働く人が増えるというコンセプトの中でスタートさせていただきました。
手数料も買い手企業からしかいただかない形でのサービスをやらせていただいております。M&Aが起きますと自動的に我々のサービスを使っていただくことが増えますので、そういった意味ではキャッシュポイント(収益を得る機会)があります。
売り手企業に関してはマーケティングで集めてくることはもちろんですが、たくさんのM&A仲介会社がありますので、そういったところとアライアンスを組ませていただいて、売り手企業を集めてきていただいています。買い手企業、売り手企業ともにどんどん増えていますが、まだマッチングは実現できていないのが現状です。
-現在、識学導入企業は何社で、そのうち何社がM&Aに関心を示されているのでしょうか。
識学導入企業は3500社で、このうち50-60社が企業買収を検討されています。M&Aの仲介事業は1月にリリースしましたが、本格的に動き始めたのは4月の中旬くらいです。このため、まだまだ動けていないところがありますので、ニーズはもっと多いと思います。
-M&Aは買い手に比べると売り手が少ない状況にあります。
当初、我々も売り手を見つけてくるのが難しいだろうという仮説のもとに M&Aの仲介事業を始めたのですが、良質な買い手に出会えてなくて困っている売り手を抱えておられる仲介業者さんが結構多く、買い手と同じくらいの数が集まっています。
-将来的にM&A仲介事業は御社の中でどのような位置づけになるのでしょうか。一つの大きな柱になるのでしょうか。
もちろん柱になってくれればいいなと思いますが、メインはあくまでもコンサルですので、コンサル以上のメイン事業になることは、あまりイメージしていません。
識学を導入する企業は毎月50-60社増えています。M&Aの仲介事業は、そうした企業様に向けたサブサービスとして進めていくことになるでしょう。
-御社自体も2020年にSaaS(サービスとしてのソフトウエア)の受託開発力の強化を目的に、モバイルアプリ・ゲームの開発会社を買収されています。現在はどのような状況でしょうか。
実はあまりうまくいっていません。今は自社のサービス開発だけに絞ってやっており、他社の開発は受けていない状況です。ただ、どちらかというと自社のクラウド系のサービスの開発を加速するというのがメインの狙いでしたので、今の状況で大きな問題はないと考えています。
-ファンドの運営も行っておられますね。
ファンドは2種類ありまして、一つはベンチャーキャピタルで、もう一つは再生ファンドです。再生ファンドの方は、新生銀行さんの子会社と一緒にやらせていただいており、まだ一社しか投資実績がありませんが、経営改善は順調に進んでいます。
ベンチャーキャピタルの方は2号ファンドの投資が、もうすぐ完了します。1号ファンドでは2社が上場しています。2号ファンドでも1年以内に1社が上場できる可能性があります。順調に進んでいるのではないでしょうか。
-ところで2023年2月期は赤字でした。2024年2月期は黒字転換を予想されています。第1四半期が終わった時点で状況はいかがでしょうか。
第1四半期は大きな赤字になりました。広告宣伝費が膨らみ費用が予算より大きくなってしまったのが原因です。第2四半期以降は費用を抑えていきますし、人員の見直しを行ったところ、大きく中途採用をしなくても、まだまだ売り上げを伸ばしていけるとの見通しが立ったため、通期では黒字化できると考えています。
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【安藤広大氏】
2002年、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(現NTTドコモ)入社
2006年、ジェイコム(現ライク)入社
2010年、ジェイコム(現ライクスタッフィング)取締役東京本社営業副本部長
2012年、同社営業副本部長兼東京本社営業部長兼事業開発部長
2013年、WEIC入社、執行役員社長室長
2013年、KDI設立、代表社員(現任)
2015年、識学設立、代表取締役社長(現任)
2017年、ARS設立、代表取締役(現任)
文:M&A Online