5Gが始まる2020年に4G「iPhoneSE2」は買いか?

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途上国市場を意識して投入した初代「SE」だが、日本でも人気を集めた。

ネットで「出る出る詐欺」とも言われていた米アップルの廉価版スマートフォン「iPhone SE2」が、ようやく登場するようだ。2020年3月後半の発売に向けて、いずれも台湾に本社を置く鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)と和碩聯合科技(ペガトロン)、啓碁科技(ウィストロン)の3社が同2月から量産に入るという。

4G最後のiPhoneとなる「SE2」

SE2は欠番となっている「iPhone 9」として発売されるという情報もあるが、一言でいえば「iPhone8のボディーにiPhone11の部品を詰め込んだ端末」になりそうだ。これは、初代「iPhone SE」が「iPhone5(s)のボディーにiPhone6sの部品を詰め込んだ端末」だったのと同じコンセプトとなる。

ただ、初代SEではメーンの背面カメラの画素数やCPUなどのスペックは当時の最新機種だった6sと同等になっていたものの、6sで採用された3D Touchはなく、ディスプレー側にある補助カメラの解像度や最大通信速度は6と変わらないなど、新旧モデルのスペックが混在している。SE2は8のボディーを流用していることから、11のデュアルカメラ搭載が見送られて8と同じシングルカメラに落ち着きそうだ。

左から最新機種の「iPhone11」、「同SE2」のベースモデルとなる「同8」、初代「同SE」(同社ホームページより)

それにもかかわらず話題になるのは、圧倒的な低価格が予想されるため。米国では449ドル~499ドル(4万9200~5万4600円)程度で販売されるとみられている。これはSE2のベースモデルである8の現行価格449ドル(日本では5万2800円)からと、ほぼ同じ。「頭脳」に当たるCPUが2世代後で最新機種と同じA13 Bionicチップを採用することから、主要ターゲットの新興国のみならず日本でも人気を集めそうだ。

ただ、問題なのは通信規格が現行の4G(第4世代移動体通信)のままであること。2020年秋に発売予定の「iPhone12」シリーズでは5G(第5世代移動体通信)に対応する予定で、アップルとしてはSE2が4G最後のiPhoneとなる。東京オリンピック開催に併せて、国内でも本格的なサービスが始まる5Gに対応できないのは「痛手」といえる。はたしてSE2は「買い」なのか?

5G展開が遅れる地方在住者は「買い」

先ず、SE2が「買い」なのは地方在住者だ。国内キャリア(通信事業者)の5Gネットワークは大都市圏から始まり、地方へ拡散していく。全国を10kmメッシュで区切った「5G基盤展開率」の5年後の目標は、NTTドコモ<9437>が97%、au(KDDI<9433>)が93.2%、ソフトバンク<9434>が64%、楽天<4755>が56.1%。先ずは東京・名古屋・大阪の3大都市圏、次いで政令指定都市、県庁所在地の順で整備される。

それ以外の地域の住民は5G対応端末を購入しても、日常では4G回線で通信することになる。ならば価格の安いSE2が「買い」だ。地元で5G展開が進んだ数年後に、5G対応のiPhoneに買い替えればよいだろう。その頃には5Gに対応した「iPhoneSE3」が格安で登場しているかもしれない。

VRやARを積極的に利用しないなら「買い」

5G最大の売り物は「仮想現実(VR)」「拡張現実(AR)」「複合現実(MR)」といった「xR」サービス。こうしたサービスを使わないのであれば、4Gで十分だ。そもそも5GにおけるxRの規格標準化は、現在も進行中。統一規格での本格的なサービスが始まるのは「5G」が普及する2025年以降になりそう。

まるでその場にいるような臨場感豊かなxRを体験できるのはそれからなので、とりあえずSE2を購入し、次かその次の買い替えで5G対応iPhoneを選ぶのもいいだろう。現時点の「もどき」のxRを少しでも高画質で楽しみたいマニア以外は「買い」だ。

カメラにこだわらないなら「買い」

SE2を選ぶか選ばないかの最も優位性の高い選択基準は通信規格ではなく、カメラになるだろう。11では背面のメーンカメラに「広角」と「超広角」レンズが、「iPhone11 Pro」ではその二つに「望遠」レンズが加わる。デジタルカメラを持たず、iPhoneでのみ写真を撮影するのであれば、価格が高くても11か11 Proを選ぶべきだろう。

一方、写真はデジタルカメラで撮影して、iPhoneで撮るのはメモ代わりの画像というのであれば、シングルカメラのSE2で十分だ。iPhoneのカメラ機能やアプリは評価が高く、コンパクトデジタルカメラに匹敵する。本格的な写真を撮影するのでなければ、SE2のカメラでも不満はないだろう。

写真や動画の伝送は5Gの方が圧倒的に速いが、大量のデータ容量を消費するため料金面で問題がある。自宅の無線LANで写真や動画を伝送するのなら、SE2は次世代iPhoneと比較しても遜色ない。カメラにこだわらないのなら、SE2は「買い」だ。

iPhone13待ちなら「買い」

5G対応でビッグモデルチェンジとなる12シリーズだが、実は2021年秋に投入される13シリーズはLightningコネクタを廃止した完全ワイヤレス端末になるなど、さらに大きな刷新が予定されている。2016年に特許申請した「折りたたみ式iPhone」の登場も考えられる。

そうでなくても5G商用サービスが開始直後のタイミングで発売される12に、多数の不具合が出るのは避けられないだろう。ならば5G対応の品質が落ち着く13シリーズまで買い替えを待つという選択肢も悪くない。

とはいえ13の発売に備えて高価な11シリーズを購入するのは、ためらわれる。8と同じ価格で2年後でもストレスなく使える11と同等の処理能力を持つSE2は、13シリーズまでのつなぎ端末と考えれば十分に「買い」といえる。

文:M&A Online編集部