「資生堂」と「花王」回復の足取りに差が

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写真はイメージです

コロナ禍の影響で過去3年振るわない状況が続いている化粧品大手の資生堂<4911>と、トイレタリー大手の花王<4452>で、業績回復に差が現れてきた。

2023年12月期に花王が増収増益に転じるのに対し、資生堂は減収に転じ、利益も営業利益は公表していないものの、税引き前利益、当期利益はともに減益となる見込みだ。回復の足取りに差が生じる要因は何なのか。

4期ぶりに営業増益へ

花王の2023年12月期の売上高は1兆5800億円で前年度比1.9%の増収を見込む。売上高は2020年12月期に前年度比8.0%の減収となったあとは2021年12月期、2022年12月期ともに増収を達成しており、2023年12月期は3期連続の増収を見込む。

利益は2020年12月期から2022年12月期まで3期連続で営業減益となっており、2023年12月期は4期ぶりに営業増益を達成できる見込みだ。エネルギーコストの上昇や世界的なインフレなどにより消費に力強さが見られないとしながらも原材料価格が落ち着きを見せ始めていることや構造改革の取り組みなどにより、増収営業増益を予想する。

花王の業績推移
2023年12月期は予想

M&Aで回復が早まる可能性も

一方、資生堂の2023年12月期の売上高は1兆円で前年度比6.3%の減収となる見込み。世界的に化粧品市場が回復すると想定しているものの、為替の影響や2023年中に久喜工場(埼玉県久喜市)とベトナム工場(ドンナイ省)で手がけているパーソナルケア製品(スキンケア、ヘアケアなど)の生産事業を売却することなどから、減収が避けられないと判断した。

同社は2022年12月期から国際財務報告基準(IFRS)を採用し、同期から公表を始めたコア営業利益(営業利益から構造改革に伴う費用、減損損失などの非経常的な要因により発生した損益を除いた額)は16.9%の増益(2023年12月期)を見込むが、税引き前利益は6.8%、当期利益は18.1%のいずれも減益を予想する。

利益については、インフレに伴う原材料費、人件費の上昇などの影響があるものの、「戦略領域への積極投資による売上創出と、原価率改善などで増益を目指す」としている。

同社は2021年以降に、ファンデーションや口紅などの高価格帯化粧品「bareMinerals(ベアミネラル)」ブランドや、ヘアサロン向け業務用事業など4件の売却を適示開示(上場企業に義務付けられている重要な会社情報の開示)しており、これが売り上げや利益が伸び悩んだ要因の一つともなっている。

戦略領域への積極投資にM&Aが含まれるのかは明記していないが、企業や事業の買収が実現すれば、回復の足取りが早まる可能性もありそうだ。

資生堂の業績推移
2023年12月期は予想 2023年12月期の営業利益は非公表

文:M&A Online編集部