【小売業界】2022年上期のM&Aは34件、「アパレル」関連が7件で最多

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ウエルシアHD…200億円超を投じて中堅ドラッグストアのコクミンを買収した(写真は東京・新宿で)

2022年上期(1~6月)の小売業界を対象としたM&A件数(適時開示ベース)は34件と前年同期を9件上回った。アパレル関連が7件と最も多く、調剤薬局・ドラッグストア、リユース(中古)品の各3件が続いた。取引金額は1554億円。トヨタ自動車系有力ディーラーのATグループがMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化した800億円規模の大型案件が金額を押し上げた。

ウエルシア、中堅のコクミンを買収

上場企業の適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

全体の5分の1を占めたアパレル関連で金額が最大だったのはワールドが約33億円を投じ、子供服企画・販売のナルミヤ・インターナショナルをTOB(株式公開買い付け)で子会社化した案件。また、アダストリアは子供服EC(電子商取引)専業ブランドを展開するオープン&ナチュラル(東京都千代田区)を子会社化した(金額は非公表)。

エービーシー・マートは、セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スポーツ用品販売のオッシュマンズ・ジャパン(東京都千代田区)を子会社化した。シューズ事業を軸に「ABC‐MART」店舗網を拡大しているが、新分野としてキャンプなどのアウトドアや、ランニング、フィットネス関連のウエア、グッズへの本格展開を模索していた。

調剤薬局・ドラッグストアではアインホールディングス、ウエルシアホールディングス、サンドラッグがそれぞれ買収を手がけた。このうち、ドラッグストア首位のウエルシアは中堅のコクミン(大阪市)など2社(約200店舗)を約217億円で傘下に収めた。

三越伊勢丹は「クイーンズ伊勢丹」を買い戻し

スーパーマーケットを対象としたのは2件。クスリのアオキホールディングスは食品スーパーのホーマス・キリンヤ(岩手県一関市)など2社を吸収合併した。クスリのアオキは近年、ドラッグストアの大型店舗で生鮮3品(青果・鮮魚・精肉)の取り扱いを広げており、その一環。

また、三越伊勢丹ホールディングスは高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」の運営会社(18店舗)を再子会社化することを決めた。2018年4月に三菱商事系投資ファンドの丸の内キャピタル(東京都千代田区)に対して、運営会社の株式66%を譲渡し、ファンド主導で経営立て直しを進めてきたが、事業再生に一定のめどがついたとして株式をすべて買い戻す。

ミニストップは、韓国コンビニ事業を、現地流通大手のロッテに310億円で売却した。今後は日本国内やベトナムに経営資源を集中させる。ミニストップは1990年に韓国に進出し、約2600店舗のコンビニを展開してきたが、ここ2年は最終赤字に陥っていた。売却先のロッテは韓国で「セブンイレブン」を運営している。

リユース品関連は3件。BuySell Technologiesがブランドバック・時計など買い取り・販売のフォーナイン(東京都千代田区)、ヤマノホールディングスが古着のOLD FLIP(千葉県八千代市)を子会社化したほか、マーケットエンタープライズがファーマリー(東京都港区)から中古農機具事業を取得した。

ATグループ、800億円規模のMBO

一方、上期の取引金額は1554億円(公表分を集計)で、過去10年で上から数えて4番目の水準。前年上期は過去10年で最も少ない約51億円にとどまった。

全体の半分以上を占めたのがATグループのMBOで、創業家が主導した。買付総額は約800億円に上り、投資ファンドが関与しないMBOとして過去最大となった。同社はトヨタ車の最有力ディーラー。国内自動車市場の縮小やトヨタ自動車による「全車種併売化」を受け、傘下の販売会社統合などの経営改革を迅速に進めるには非公開化が必要と判断した。

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文:M&A Online編集部