相次いで登場する新型コロナ治療薬 7番目はファイザー製か?日本政府は200万人分の購入で合意

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日本政府は、米国の大手製薬会社ファイザーが開発中の新型コロナウイルス治療薬「PF-07321332/リトナビル」を、薬事承認を条件に、200万人分を購入する合意書をファイザーと交わした。

現在、日本では新型コロナウイルス治療薬として5種が承認されており、1種が承認待ちの状態にある。「PF-07321332/リトナビル」は臨床試験中で、日本での承認申請については厚生労働省と協議しており、申請予定時期などの詳細は公表していない。

日本政府が臨床試験中でありながら200万人分も購入することを決めた治療薬とはどのような薬なのだろうか。これまでの治療薬とはどのような違いがあるのか。

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低所得国には安く供給

PF-07321332は飲み薬で、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素の作用を阻害することで、感染症の重症化を軽減するか、発症を減少できる。

リトナビルは、PF-07321332の分解を遅らせ、ウイルスに作用する濃度を長時間体内で維持するために用いるもので、他の抗ウイルス薬でも併用されている。

ファイザーは同治療薬が全世界で公平に使用できるように、高中所得国は、低所得国より高い価格に設定するほか、同治療薬の製造と供給を支援するために最大約10億ドル(1130億円)の自己資金を投入する計画という。

モルヌピラビルは160万人分を購入

これまでに新型コロナウイルスの治療薬として承認されたのは、「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」「カシリビマブ/イムデビマブ」「ソトロビマブ」の5種類。

「レムデシビル」はエボラ出血熱治療薬、「デキサメタゾン」は感染症や肺炎などの治療薬として用いられているステロイド薬、「バリシチニブ」は関節リウマチ薬。

「カシリビマブ/イムデビマブ」と「ソトロビマブ」は新型コロナウイルスがヒトの細胞に取りつく際に必要となるスパイクたんぱく質に結合し、スパイクたんぱく質の機能を奪うことでウイルスの増殖を抑える。

また現在、厚生労働省に製造販売承認を申請中なのが、大手製薬会社メルクが開発した飲み薬「モルヌピラビル」で、承認されれば6番目の治療薬となる。

「モルヌピラビル」は、遺伝子であるDNAを鋳型として生成され、たんぱく質の合成などを担うRNAを変異(RNAを構成するアミノ酸に構造が似ている別の物質をRNAに取り込ませる)させることでウイルスの増殖を抑える。すでに日本政府は薬事承認後に約160万人分を購入することを決めている。

軽症、中等症の患者向けの飲み薬としては「モルヌピラビル」が、承認されれば国内初となり、「PF-07321332/リトナビル」はこれに続くことなる。インフルエンザ薬のように自宅で服用できる新型コロナの治療薬が広まることを期待する人は多いだろう。

【承認を得た新型コロナウイルス感染症治療薬5種とモルヌピラビル、PF-07321332/リトナビル】

名称 種類 投与法 段階
レムデシビル エボラ出血熱治療薬 点滴 承認済み
デキサメタゾン ステロイド薬 経口など 承認済み
バリシチニブ 関節リウマチ薬 経口 承認済み
カシリビマブ/イムデビマブ 中和抗体薬 点滴 承認済み
ソトロビマブ 中和抗体薬 点滴 承認済み
モルヌピラビル RNA変異薬 経口

申請中

PF-07321332/リトナビル 酵素阻害薬 経口 開発中

文:M&A Online編集部