コロナ後の投資先はどこ?ツイッタ―買収にも協力 ペガサスのウッザマンCEOに聞く

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ペガサス・テック・ベンチャーズのファウンダー(創業者)兼CEO(最高経営責任者)のアニス・ウッザマンさん

米国シリコンバレーに本社を構えるベンチャーキャピタルのペガサス・テック・ベンチャーズは、大企業のオープンイノベーション(他社などが持つ技術やアイデアなどを取り入れ、新しい事業を創り出す方法)を支援しており、これまでに220社以上のスタートアップに投資している。

大企業がファンドを介して、技術革新を起こすために戦略投資を行うことをCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と呼び、現在はどの企業に投資するのかの意思決定を大企業が行い、外部のファンドマネージャーがファンドを運用するCVC4.0の状態にあるという。

同社のファウンダー(創業者)兼CEO(最高経営責任者)のアニス・ウッザマンさんに、CVCの現状やコロナ後の有力投資分野などについて聞いた。

1-2%の出資でも効果大

-日本では外国人旅行者の受け入れが始まるなどコロナ禍の影響が次第に薄らぎ始めています。CVC4.0の動向にも変化はありますでしょうか。

グローバルで見ると、CVCはベンチャー投資全体の20%以上になっています。日本でもブームになっており、勢いがすごいと感じています。現在80社ほどから問い合わせがあり、近いうちに数多くの日本企業に出資してもらえるようになると思っています。

CVCの投資はマイナー出資(持ち株比率が50%未満の出資)です。私はマイナー出資のことをマイナーM&Aと呼んでいます。なぜかというと、CVC4.0では1-2%の株しか買収していませんが、これだけあれば提携できるため、M&Aで子会社化して得られるものと、マイナー出資で得らえるものはほとんど変わらないからです。

M&Aに必要な何十億円、何百億円といったお金を用意しなくても、マイナー出資で、数年後までに売り上げを数百億円増やしたいといったレベニューターゲット(売上高目標)を達成することができます。

外部のスタートアップと組んで、2000何年までに売り上げをこれくらいにしたい、利益をこれくらいにしたいという、こうした考え方は新しい動きです。少し前までは新規事業は自前で立ち上げるのが普通で、外部との連携でレベニューを上げるという考えはあまりありませんでした。

メタバースやNFTに注目

-CVC4.0の次はどのようなステージになるのでしょうか。

マイナー出資をしたあと、うまくいけば同社を買収したいというケースが増えつつあります。日本企業がアグレッシブ(積極的)になってきています。こうした動きがさらに広がればCVC5.0になるのではないかと考えています。マイナー出資し、その後子会社化するという事例が数十社以上になると、このスキームが浸透していくのではと思っています。

-出資先企業となるスタートアップは、どのような分野の企業でしょうか。ポストコロナの動きはみられますか。

2022年のトレンドはメタバース(仮想空間)です。これはVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などを指すもので、この業界は2022年に50兆円のマーケットでしたが、2028年には83兆円に達すると言われています。

VRゴーグルをかけると、バーチャルの新世界が目の前に広がります。例えばメタバースでは買い物や旅行などができます。いくつかのメタバースができていますが、これらは一つひとつの国と思ったらよいでしょう。今は一つのメタバースに入ると、他のメタバースに入るには一度ログアウトし、またログインし直さなければなりません。

そのうち一つのメタバースから別のメタバースに行ける仕組みができると思われます。こうした技術やサービスに関わっているスタートアップは投資先として魅力的ですね。例えばゴーグルのメーカーや、ゲームメーカー、画面制作、ソフトウエア企業などがあります。日本でもパナソニックのVRゴーグル、ソニーのVR端末などの事例があります。日本はVR、ARの特許件数は世界で2番目に多く、頑張っていますね。

-他にはどのような分野がありますか。

メタバースに次ぐトレンドはNFT(非代替性トークン)です。NFTはブロックチェーンを使って複製できないようにする技術で、写真やビデオ、音楽などのデジタルの資産を指します。2025年には8兆円のマーケットになると言われています。

NFTの業界でNFTをコレクションしている方々が多くいらっしゃいます。NFTを一度購入して、将来的に高値で売却できるという予想となっているからです。

このほかに世界のテックトレンドとして、量子コンピューターがあげられます。グーグルの量子コンピューターは、世界最先端のスーパーコンピューターより1億5800万倍速く処理ができます。マーケットは2035年までに100兆円に到達すると思われています。さらに世界のトレンドとして、再生エネルギー、宇宙産業などの分野がホットで、今後活発に進んでいくと見ています。

ツイッター買収に協力

-コロナ禍にあった2020年4月にお聞きした時は、野菜などをオンラインで注文して接触せずに受け取ることができるサービスや遠隔医療、AI(人工知能)技術とオートメーションに関連する製造業、オンライン教育といった分野を上げておられました。ポストコロナは様変わりですね。

大きく変わってきていますね。中でも、最近一番注目しているのはツイッターへの投資です。イーロンマスク氏が買収しようと思っているのですが、彼は有望な投資家たちに声をかけ、今回の買収に必要な資金を集めようとしています。私どもペガサス・テック・ベンチャーズもその中の一社です。今回それぞれの投資家が数百億円の規模感で投資をしていくと言われており、ペガサスは、マスクさんの要請に応じていくつもりです。

【略歴】アニス・ウッザマンさん

東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士取得。東京都立大学工学部情報通信学科にて博士取得。IBM などを経て、2011 年に ペガサス・テック・ベンチャーズを設立。

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聞き手:M&A Online編集部 松本亮一編集委員