首都大学東京松田ゼミ 事業が回るプラン作る M&Aを学びたい人大集合(2)

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首都大学東京

首都大学東京経済経営学部の松田千恵子教授は、M&Aやビジネスプランなどをテーマに経営戦略ゼミを指導している。現在ゼミ生は18人で、4つのグループに分かれてビジネスプランの作成に取り組んでおり、戦略論だけでなく数字や組織なども考えて、きっちりと事業が回るようにビジネスプランを仕上げるという。

M&Aは総合芸術

松田教授はM&Aを総合芸術と位置付ける。企業価値評価で値段をつけ、資金を調達するだけでなく、事業としてなぜM&Aが必要なのか、全社のポートフォリオの中でどのような位置づけなのか、経営管理をどうするのか、企業統治をどうするのか。「そういったことを総合的にやりたい」という。

ゼミは前期に、M&Aを実施した企業について調べ、後期はゼミ生自身がやりたいことを考えながら、ビジネスプランを作り上げていく。M&Aとビジネスプランニングは別物ではなく、事業としての姿がトータルで描けないと、起業もM&Aも実現できない。そのための基礎をゼミで身に付ける。

起業に期待

松田教授はM&Aは大きく3つに分かれているという。1つは大企業のグローバルM&A、もう1つは件数が最も多い事業承継M&A、そして最近増えてきたのがベンチャーやスタートアップ企業のエグジットとしてのM&Aという。

スタートアップ企業によるIPO(新規株式公開)とM&Aの動向を常にチェックしており、「最近はM&A が圧倒的に増えてきた。恐らくこの流れはこのまま続くと思う」と分析する。その理由としてIPOは多くのコストがかかり、その負担が重い。創業者利益を追求したいというのであれば、M&Aの方が手軽で早いためと見る。

松田教授はゼミ生の中から起業する人が出てくることを期待するとともに「すぐに起業するのでなくても、企業に入ってビジネスプランニングをやるスキルを持っていれば、自分で何かやる時にハードルが低くなる」とゼミ生を応援する。

首都大学東京のゼミは、必須ではなく希望制のため、やりたい人だけが参加する。松田ゼミの倍率は3倍ほどで、松田教授が自ら面接をして「本当にやりたい優秀な人だけを受け入れている」と、ゼミ生への配慮も忘れない。

アーティストとライブハウスをマッチングしたい

ゼミ生の的場伊吹(3年生)さんのグループはアーティストとライブハウスをマッチングするビジネスを考案中。的場さん自身がバンド活動をしている時に、ライブハウスとのやり取りで不便さを感じたことから、このテーマを提案。他のゼミ生とともに事業化に向けてのアイデアを絞っているところ。「もともと悩んでいたことなので、ぜひ事業化したい」と意欲的だ。

また、ゼミ生の小河由実(4年生)さんのグループは現在10件ほどのテーマについて検討を加えており、近く1つに絞り込む予定。その後、選択したテーマについて外部環境、内部環境、市場性などを調査し、事業化に向けた検討を加える。ゼミについては「起業につながらなくてもマーケティングなどの企業で必要な知識が得られる」と積極的に参加している。

【松田千恵子(まつだ・ちえこ)教授の略歴】

首都大学東京大学院 経営学研究科 教授、首都大学東京 経済経営学部 教授

日本長期信用銀行にて国際審査、海外営業等を担当後、ムーディーズジャパン格付けアナリストを経て、コーポレイトディレクション、ブーズ・アンド・カンパニー(旧ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン)でパートナーを務める。

2011年より現職。専門は経営戦略、財務戦略。資本市場と企業経営との関係にまつわる諸事情に関する研究、教育に注力している。公的機関の経営委員や上場企業の社外取締役、社外監査役を務める。

著書「格付けはなぜ下がるのか~大倒産時代の信用リスク入門」(日経BP社)、「ファイナンスの理論と実務」(金融財政事情研究会)、「成功するグローバルM&A」(中央経済社)、 「グループ経営入門 第三版」(税務経理協会) 、「これならわかるコーポレートガバナンスの教科書」(日経BP社) 、「コーポレートファイナンス実務の教科書」(日本実業出版社)など。

東京外国語大学外国語学部卒、仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院経営学修士、筑波大学大学院企業科学専攻博士課程修了。博士(経営学)


【首都大学東京の紹介】

首都大学東京南大沢キャンパス

首都大学東京は2005年に「東京都立大学」「東京都立科学技術大学」「東京都立保健科学大学」「東京都立短期大学」の4大学が統合して誕生した。

人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部と学部とつながった7大学院がある。

2018年5月時点の学生数は学部が6883人、専攻科が10人、大学院が2193人の合計9086人。内訳は男子学生5639人、女子学生3447人で、このうち中国からの365人をトップに545人の留学生が在籍する。

東京都八王子市の南大沢キャンパスをメーンに、東京都日野市の日野キャンパス(システムデザイン学部3年-4年生)、東京都荒川区の荒川キャンパス(健康福祉学部2年-4年生)の3カ所にキャンパスがある。2020年には15年ぶりに「東京都立大学」の校名が復活する。

取材・文:M&A Online編集部