件数、金額ともに2年ぶりの減少に 今年1-6月の製造業M&A

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製造業の上半期M&Aは2年ぶりに振るわず(写真はイメージ)

2022年前半の製造業のM&Aは、件数・取引金額ともに振るわなかった。M&A Online編集部がM&Aデータベースで、製造業の2022年1-6月のM&A発表案件(適時開示ベース)を集計したところ、件数は99件と前年同期より2件少なく、2年ぶりの減少に。1-6月としては2013年以降の10年間で、101件だった2015年と2021年、100件だった2019年に次ぐ4番目だった。

大型M&Aの大幅減で、取引金額伸び悩む

取引金額も前年同期比56.9%減の約1兆936億円と、2年ぶりの減少に。直近の10年間では7番目と冴えない結果に。前年同期に6件あった1000億円を超える大型M&Aが今年はわずか2件しかなく、前年同期に3件あった3000億円超の案件が今年はなかった。件数の減少はわずかだったが、大口案件の減少が響いている。

急激な円安に伴う原材料費や燃料費の値上がり、ポストコロナをにらんだ求人合戦に伴う人手不足など、製造業を取り巻く状況は一転、厳しくなってきた。こうした不透明な状況を受けて、製造業が多額の資金を必要とする大口のM&Aに二の足を踏ませた可能性がある。

一方で件数はそれほど減っていないことから、まさにこうした「不透明な状況」を乗り切るためにもM&Aが必要との判断も働いていると見られる。当面は「値ごろ感」がある中・小口のM&Aで、堅実な業容拡大を狙う企業が増えそうだ。

取引金額トップは横浜ゴムの海外農機タイヤメーカー買収

今年前半の発表案件で金額が最も高かったのは、横浜ゴム<5101>が3月に発表した、スウェーデンの農業機械用タイヤメーカー「トレルボルグ」をアドバイザリー費用約20億円を含む約2672億円で子会社化する案件。農機をはじめ鉱山車両、建設車両、林業機械用などの生産財タイヤ事業をグローバルに拡大するのが狙い。

2番目は東芝<6502>が2月に発表した、空調子会社の東芝キヤリア(川崎市)を合弁相手の米キヤリアに約1000億円で譲渡する案件。東芝は1999年に空調機器の世界的な大手であるキヤリアとの合弁で東芝キヤリアを設立。今回、東芝の持ち分60%のうち55%を米キヤリアに譲渡する。空調機器の需要拡大が世界的に見込まれる中、同事業のキヤリアへの集約が最善と判断した。

3番目は日本製鉄<5401>が1月に発表した、タイの電炉大手GスチールとGJスチールをTOB(株式公開買い付け)などにより880億円で子会社化する案件。これまで現地生産してきた高級鋼に加えてボリュームゾーンである一般的な薄板製品の需要に対応するのが狙い。

取引金額の上位10件は以下の通り。

順位 開示日 取引総額(億円) タイトル
 1 3月25日 2,672 横浜ゴム、スウェーデンの農業機械用タイヤメーカー「トレルボルグ」を子会社化
 2 2月7日 1,000 東芝、空調子会社の東芝キヤリアを合弁相手の米キヤリアに譲渡
 3 1月21日   880 日本製鉄、タイの電炉大手GスチールとGJスチールを子会社化
 4 4月28日   842 リコー、富士通傘下でスキャナー大手のPFUを子会社化
 5 2月17日   804 日東電工、英包装・製紙大手モンディから衛生材料事業を取得
 6 6月1日   585 関西ペイント、アフリカの塗料子会社2社をオランダ化学大手アクゾノーベルに譲渡
 7 5月16日   565 キトー、吊り具メーカーの米クロスビーグループと経営統合
 8 2月15日   336 村田製作所、通信部品開発・設計の米レゾナントを子会社化
 9 6月24日   295 浜松ホトニクス、レーザー装置・部品製造のデンマークNKT Photonicsを子会社化
10 2月9日   265 日本ハム、水産子会社のマリンフーズを双日に譲渡

文:M&A Online編集部