日本企業の海外M&Aが復調、コロナ前の件数を超える

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2023年上期の海外M&A…金額トップのアステラス製薬と2位のキリンホールディングス

日本企業がかかわる海外M&Aが回復を遂げている。2023年上期(1~6月)の海外M&Aは前年を3割上回る94件で、コロナ前の2019年(上期、89件)を超えた。日本企業が買い手となるアウトバウント取引の持ち直しが目立つ。一方、外国企業が買い手(日本企業が売り手)となるインバウンド取引はコロナ禍以降、高止まり傾向が続いている。

7年ぶりに年間200件に届くか

上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)をもとに、M&A Onlineが調べた。

海外M&Aはコロナ禍を境に減少に転じ、2020年は年間152件と前の年(199件)から25%近い大幅ダウンに見舞われた。2021年は164件とひとまず回復に転じたが、2022年は156件とコロナ前の水準から再び遠ざかった。ウクライナ戦争による地政学リスクの高まりや記録的な円安進行などが影響したためとみられる。

2023年上期のM&A総数は前年比43件増の501件で、年間1000件の大台に乗せる勢い。内訳は国内M&Aが407件(前年386件)、海外M&Aが94件(同72件)。国内M&Aが高水準を堅持し、海外M&Aも増加傾向が鮮明になっている。こうした中、2023年の海外M&Aは2016年(208件)以来7年ぶりに年間200件を超える可能性がある。

アウトバウンド取引が持ち直し

海外M&Aは件数もさることながら、内容的にも本来の姿を取り戻しつつある。今年上期の94件をみると、日本企業が買い手のアウトバウント取引が62件、外国企業が買い手となるインバウンド取引が32件で、両者にはおよそ2倍の開きがある。昨年上期はアウトバウント取引が38件、インバウンド取引が32件と両者が30件台でほぼ拮抗していたのと比べ、様変わりとなった。

海外M&Aをめぐっては過去、日本企業による買収が数のうえで圧倒的に優勢で70%以上を占めていた。しかし、コロナ禍以降、インバウンド比率が急速に高まっていた。日本企業による海外事業を中心とする売却の動きが広がり、逆に日本企業が買い手のアウトバウンド取引は件数を大きく落とした。

インバウンド比率の推移をみると一目瞭然で、コロナ前の2019年は22%だったが、2020年33%→21年41%→22年42%と3年で倍増した。足元の2023年は上期を終えた時点で34%で、なお高止まり状態にある。

中国・香港、日本企業による売却が優勢

2023年上期の海外M&Aを国・地域別にみると、全94件中、米国が20件とトップ。このうち16件がアウトバウント取引で、日本企業による米国企業の買収が活発だった。2位はドイツ7件で、これに中国、シンガポールの各6件、カナダ、英国、香港の各5件が続いた。

中国は6件中4件、香港は5件中3件がインバウンド取引で、日本企業が主に現地子会社を地元企業に売却する動きが目立った。

◎2023年1~6月:海外M&Aの金額上位10

1 アステラス製薬 米バイオ医薬品企業のアイベリック・バイオを子会社化 8040億円
2 キリンホールディングス オーストラリア健康食品メーカー大手のブラックモアズを子会社化 1692億円
3 NIPPON EXPRESSホールディングス オーストリア物流大手のカーゴ・パートナーを子会社化 1267億円
4 ENEOSホールディングス チリに保有する銅鉱山カセロネス銅鉱山の株式51%をカナダLundinに譲渡 1246億円
5 セガサミーホールディングス フィンランドのモバイルゲーム会社「ロビオ」を子会社化 1049億円
6 富士フイルムホールディングス 米国インテグリスから半導体用プロセスケミカル事業を取得 945億円
7 ゼンショーホールディングス 北米・英国で持ち帰りすし店展開のスノーフォックス・トップコを子会社化 874億円
8 三井物産 日米合弁給食大手のエームサービス(東京都港区)を子会社化 700億円
9 三井物産 米化学品大手セラニーズ傘下で機能性食品素材製造のオランダ「ニュートリノバ」を子会社化 660億円
10 オリンパス 消化器用金属製ステント開発・製造の韓国Taewoong Medicalを子会社化 333億円

文:M&A Online

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