レイオフで手打ちを図るも、マスク氏から見捨てられたツイッター

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ツイッター買収は中断状態だ(Photo By Reuters)

ついにイーロン・マスク米テスラ最高経営責任者(CEO)が米ツイッターに「三行半」を叩きつけた。マスク氏は買収中止をほのめかしていたが、ツイッターはレイオフ(一時解雇)など財務体制の強化に乗り出してつなぎとめようとしたものの一蹴された格好だ。

打開策の「レイオフ」通用せず

ツイッターは2021年12月期決算で2年連続の最終赤字になるなど業績が低迷しているのに加え、実働していない「幽霊アカウント」問題でイーロン・マスク米テスラ最高経営責任者(CEO)との買収交渉がこじれている。こうした問題の打開策としてレイオフに踏み切ったようだ。

マスクCEOは6月16日のツイッター社員集会に参加して「今はコストが収益を上回っている。人員の合理化を行わなければツイッターは成長できないだろう」と、収益改善のためにレイオフを実施する可能性があると発言していた。

マスクCEOの発言には、ツイッターの2021年10~12月期売上高が前年同期比で2割増えたにもかかわらず、人件費や研究開発費などの増加により純利益が2割近く減ったことが念頭にあると思われる。

「違約金」か「値下げ」で収拾

とりわけ採用についてはテック株の値下がりや業績低迷などを受けて、ツイッターだけでなく暗号通貨企業の米コインベース・グローバルや米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、米配車サービスのリフト、ウーバー・テクノロジーズなどでも採用を縮小または見合わせている。

こうした状況を受けて、ツイッターは採用部門の従業員のレイオフに踏み切った。ツイッターとしてはマスクCEOの要求を部分的に受け入れることで、膠着(こうちゃく)した買収交渉の前進を狙っていた。しかし、マスクCEOは「幽霊アカウント」を口実に買収中止に踏み切った。

ツイッターは訴訟準備を進めており、マスク氏に合意通りの買収の実施を求める方針だ。米国では2008年に米プライベートエクイティ(PE)投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントが米化学メーカーのハンツマン・コープに65億ドルでの買収を中止したが、アポロがハンツマンに和解金を支払って解決した。

2020年には高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを理由に前年に、約162億ドル(約2兆2200億円)で合意した米宝飾品大手ティファニーの買収破棄を宣言。その後の交渉で約158億ドル(約2兆1600億円)に値下げし、2021年1月に買収を完了している。ツイッターの買収問題も、いずれかの方法で「手打ち」をすることになりそうだ。

文:M&A Online編集部

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