消費の回復が進んでいる海外の比率の高い、力の源ホールディングス<3561>などの大手ラーメン店が業績を伸ばす中、国内需要中心の中堅のラーメン店にも回復の兆しが現れてきた。
「一刻魁堂」などを運営するJBイレブン<3066>は、2024年3月期の営業損益が4期ぶりに黒字化する見通しのほか、「山小屋」などを運営するワイエスフード<3358>も2024年3月期に、9期ぶりの営業損益の黒字化を予想する。
2023年12月に上場したばかりの「京都北白川ラーメン魁力屋」を運営する魁力屋<5891>は、2023年12月期に80%近い営業増益を達成し、2024年12月期も2ケタに迫る営業増益を見込む。
ただ、東京商工リサーチによると、2023年のラーメン店の倒産(負債1000万円以上)件数は前年の2.1倍に急増し2009年以降では最多となるなど、国内のラーメン店を取り巻く環境は厳しい。
中堅ラーメン店はこのまま勢いに乗り復活を遂げることができるだろうか。
JBイレブンは2024年2月9日に、業績見通しを上方修正し、営業利益を当初予想より4000万円多い、1億2700万円に引き上げた。
売上高は修正していないが、過去最高を更新する見込みという。この増収による利益率の改善や、コスト管理などの効果が現れ、利益が上振れした。
同社は2021年3月期に営業赤字に陥り、3期連続で水面下にあったが、期末までに2カ月を切った時点での上方修正だけに、ようやく浮上のめどがついたといってよさそうだ。
ワイエスフードは、2024年3月期にわずか100万円だが、営業損益が黒字に転換する見通しだ。営業黒字は2015年3月期以来となる。
2024年3月期第3四半期時点で、主力のラーメン店運営とラーメン店のフランチャイズ運営などからなる外食事業の営業利益が、前年同期比2倍ほどの6900万円となるなど、回復の傾向が鮮明になっている。
同第3四半期の全社の営業利益は2600万円(前年同期は3700万円の赤字)に達しており、何とか黒字を確保できそうな状況にある。
この両社と比較すると魁力屋は安定している。同社の2023年12月期の売上高は105億8300万円で、前年度より20.1%増えた。営業利益は6億7900万円で、前年度比78.3%の大幅増加となった。
焼きめし定食半額祭や生ビール祭、餃子半額祭などの販促キャンペーンを実施したほか、15店舗を新規出店(退店2店、フランチャイズへの移行3店)したことなどから、増収増益を達成できた。2024年12月期も基調に変化はなく、11.2%の増収、9.1%の営業増益を見込んでいる。
東京商工リサーチの調査では、2023年のラーメン店の倒産件数は45件で、2013年の42件を上回り、2009年以降では最多を更新した。
休廃業や解散も同様で、2023年は29件(前年度比31.8%増)で、2018年の23件を超え、2009年以降では最多となった。
国内のラーメン店は、小規模、零細規模の事業者が多く、食材費や光熱費、人件費などの上昇で採算が悪化しているものの、客離れのおそれから値上げが難しい状況にある。
同社では「今後も他店との差別化を図れない小、零細規模のラーメン店の淘汰は続くとみられる」としている。チェーン展開する中堅のラーメン店も、決して安泰ではなさそうだ。
文:M&A Online