上場企業による子会社・事業の売却件数が4年ぶりに減少 コロナ感染拡大で再び増加も

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写真はイメージです

過去10年間では件数、金額ともに3番目

上場企業による子会社・事業の売却件数が4年ぶりに減少に転じた。M&A Online編集部がM&Aデータベースで、2022年1-6月の上場企業による子会社・事業の売却案件(適時開示ベース)を集計したところ、件数は124件で、2021年1-6月の168件から4分の1ほど減った。

2021年はコロナ禍で人の移動や経済活動が制限され、業績不振に陥る企業が多かったことから、財務内容の改善を目的とした子会社や事業を売却する事例が目立った。2020年も同様で、2年連続で急増し100件の大台を超えていた。

2022年は経済活動が再開され、コロナ禍の影響が薄らいできたことなどから、件数が減少に転じたものと見られる。

件数の減少に伴って売却金額も減少しており、2022年は7294億円と、2021年の1兆8446億円から、半分以下に萎んだ。金額が減少に転じるのは2019年以来3年ぶり。

ただ、減少したとはいっても、依然高い水準にあり、2013年以降の10年間では件数、金額ともに3番目となった。7月に入り新型コロナウイルス感染が拡大傾向にあり、企業業績への影響が表面化すれば、上場企業による子会社・事業の売却が再び増加することもありそうだ。

【上場企業による子会社・事業の売却の推移】(1-6月)

売却金額のトップは三菱商事の1157億円

2022年1-6月に上場企業が、子会社や事業を売却した案件中、最も売却金額が多かったのは三菱商事<8058>が、不動産運用子会社の三菱商事・ユービーエス・リアルティ(MC-UBSR、東京都千代田区)を、米投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)傘下の76(東京都千代田区)に売却したもので、売却金額は1157億円。

事業構成の入れ替え、強化の一環で、不動産運用事業では今後、私募REIT(不動産投資信託)、私募ファンド、海外運用事業を主な成長領域とするという。

金額の2番目は東芝<6502>が、空調子会社の東芝キヤリア(川崎市)を、合弁相手の米キヤリア・グローバル傘下のキヤリアに売却する案件(2022年9月末までに完了する見込み)で、売却金額は1000億円。東芝は経営改革として中核事業と非中核事業の選別を進めており、今回の売却はこの一環。

金額の3番目は、富士通<6702>がスキャナー大手のPFU(石川県かほく市)を売却する案件で、売却金額は842億円。このほかに100億円以上の案件が14件あった。

【上場企業による子会社・事業の売却金額上位10件】(2022年1-6月)

案件

売却金額(億円)
1 三菱商事、不動産運用子会社MC-UBSRを売却 1157
2 東芝、空調子会社の東芝キヤリアを売却 1000
3 富士通、スキャナー大手のPFUを売却 842
4 西武ホールディングス、西武建設を売却 620
5 関西ペイント、アフリカの塗料子会社2社を売却 585
6 スクウェア・エニックス・ホールディングス、ゲーム開発の海外2社などを売却 389
7 SOMPOホールディングス、ブラジル子会社の個人保険事業を売却 319
8 ミニストップ、コンビニ事業の韓国子会社を売却 310
9 日本ハム、水産子会社のマリンフーズを売却 265
10 大建工業、住宅用構造材製造の米国PWTを売却 240

文:M&A Online編集部