「iPhone SE3」の値上げは今後の円安を織り込み済み?

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米アップルの廉価版スマートフォン「iPhone SE」(第3世代)が発売された。前モデルよりも8000円ほど値上げされ、ついに5万円の大台を超えた。それでも現行機種で最も安い「iPhone13 mini」の8万6800円(最も安いモデル、以下同)に比べれば安いが、問題は日本での価格だ。

日本の値上げ率は米国の2倍以上

実は米国でもSE3は値上げされている。SE2の399ドルから、SE3は429ドルと30ドルの値上がり。値上げ率は7.5%だ。一方、日本ではSE2が4万9800円から5万7800円と8000円も値上がりしている。日本での値上げ率は16.1%と2倍以上だ。

なぜ、日本での価格がここまで値上がりしたのか?その背景には弱含みの円相場がある。SE2の価格為替レート(日本価格を米国価格で割った値)は1ドル=約125円、一方、SE3は約135円と10円も円安方向に振れているのだ。

iPhone日米価格比較
機種名 iPhone SE3 iPhone SE2 差額
日本価格(円) 57,800 49,800 8,000
米国価格(ドル) 429 399 30
価格為替レート(円) 135 125 10

「円安」がアップルユーザーの懐を直撃

確かに円安は進行している。3月16日には前日比40銭円安ドル高の同118円37銭〜38銭で取引された。これは17日未明に米連邦準備理事会(FRB)が利上げを発表するとの見通しから、金利の低い円を売って利回りが高いドルを買う動きが強まったため。

かつては「有事の円」と言われ、リーマン・ショックが発生した2008年9月から12月にかけて20円31銭の円高ドル安に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による最初の感染爆発が起こった2020年1月から3月にかけては5円94銭の円高ドル安になった。ところがロシアによるウクライナ侵攻下で円安に見舞われ、「有事の円」は過去のものになった。

日本はデフレ脱却が見通せずゼロ金利政策は継続される見通しで、円高に触れる可能性は低い。アップルが急速な円安を見越して、iPhoneの価格為替レートを円安にスライドするのも無理のない話だ。今後も新商品の値上がりが懸念される。

例えば今年秋に発売される「iPhone14 Pro」の米国価格が現行機の「iPhone13 Pro」と同じ999ドルに据え置かれても、価格為替レートがSE3と同じ1ドル=135円で設定された場合、14 Proの日本価格は13 Proの12万2800円から1万2000円以上も値上がりして13万4865円になる計算だ。日本のユーザーにとっては頭の痛い問題になるだろう。

文:M&A Online編集部

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