メガバンクのリテール部門の花形は、資産運用部門であることに間違いはない。投資信託や生命保険、債券などを販売し、収益を得る部門になる。
2010年前後は銀行全体の収益の3割程度を稼いでいた時もあり、それを牽引していたのがこの資産運用部門だった。今も、支店長などになりたい場合は、資産運用部門にいる必要がある。
しかし、その仕事は今、過酷を極めている。なぜなら、対面で営業をする支店の営業員は劇的に今減っているからだ。
東京都心部はともかく、埼玉や神奈川、千葉などの富裕層が一定数しかいない地域については、アッパー層を担当する担当者は各支店1人もいない。大体5カ店程度を2人で担当するのが一般的だ。
1人の担当者で担当する顧客数は大体500人程度になる。しかもアッパー層を担当するためその要求は厳しい。これらの要求を1人の担当者で全て請け負うのは非常に大変なのは想像に難くないだろう。
このように過酷な現場であるため、現在メガバンクのアッパー層の担当者はどんどん辞めている。しかも、なかなか人を配置するのが難しいため、残った営業員でカバーしているのが現状だ。
では、なぜ現在銀行は支店の営業担当者を削減しているのだろうか。理由は1つ。支店の営業で利益を上げるのが難しくなっているからだ。
投資信託や生命保険の手数料はどんどん低くなり、これらを販売しているだけでは、もはや支店を存続させるのは難しくなっている。このような現状があるため、多くのメガバンクでは、支店の数を減らし、固定費を減らしている。この傾向にますます拍車がかかっている。
では、現在多くの行員はどの部門に所属しているのだろうか。
悲しいことに銀行のリテール部門の稼ぎ頭は、今や圧倒的にカードローンになっている。カードローンは住宅ローンやマイカーローンなどに比べて高い金利が取れるため、大きな収益源になっているのだ。
支店の不採算をカードローンで補っているのが現状だ。今後もこの傾向は続くだろう。もしこれからメガバンクに就職した場合、将来的にカードローン部門に配属される可能性が高い。
カードローンの仕事がしたければ問題ないかもしれないが、そうではない方は、メガバンクのリテール部門に就職するのは今一度検討し直した方が良いだろう。
リテール部門の花形である資産運用部門の人はどんどん削られている。また、支店の数も同様だ。今後もこの傾向は続いていくはずだと予想する。収益の稼ぎ頭であるカードローン部門以外、メガバンクのリテール部門が生き残るのは厳しいのかもしれない。
ただし、グループ会社の証券会社や信託銀行とタッグを組み、超富裕層のみを対象にした資産運用ビジネスは今後大きくなるかもしれない。
文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)
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