【元銀行員が語る】富裕層と一般層…メガバンクはどう顧客対応を分けているのか?

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メガバンクの個人顧客を相手にする資産運用業務は厳しくなっている。しかし、あるメガバンクでは、富裕層の対応と一般的な資産形成層で明確に対応を分ける施策をとることによって、収益の改善を図っているのをご存知だろうか。

そこで今回は、メガバンクの個人顧客を相手にする資産運用業務の施策について説明する。

資産形成層にはリモートでの相談が基本

富裕層とそれ以外の対応を明確に分けているのが三井住友銀行だ。

富裕層に対しては複数の支店を管轄するエリアといった組織に所属をする優秀な担当者が対応をする。銀行のグループ会社である証券会社や信託銀行などを紹介し、グループ一丸となって、富裕層には対応している。

様々なイベントも実施しており、富裕層の満足感は上がっている。なぜここまで富裕層に対して手厚くフォローをするかというと、得られる収益が非常に大きいからだ。

一方、富裕層以外の一般の顧客層については、基本的に対面での案内はしない。電話やオンライン面談などを使ったリモートでの対応が基本となっている。

特に電話とオンライン面談を使う。営業については多くの営業員がこちらの部署に配属されており、大きな成果を上げつつある。

資産運用の担当者はどんどん減る

ひと昔前に比べ、銀行の資産運用の担当者はどんどん減っている。今や東京の中心の支店を除いて、1つの支店に1人の外回りの担当者もいないのが現状だ。

地方店になると支店長が外回りを行っている。しかも地方店は課長がいないので、支店長が課長と外回りの営業担当者の役割もこなさなければならなくなっている。このように銀行の運用担当者の数は非常に少なくなっている。

今後もこのような傾向が続くだろう。なぜなら外回りの営業は効率が悪いから。リモートであれば資産運用の相談を行いたい人たちにピンポイントで面談をすることができる。しかもリモートで準備が必要ないため、1日に10人以上の相談を受けることも可能だ。

このように、極めて効率が良いため、富裕層以外の人たちについては、リモートで対応するのが今後も主流になっていくだろう。

ネット銀行とも提携

三井住友銀行は自前の商品を使った運用相談だけではなく、最近はSBI証券と提携して富裕層以外の顧客を送客している。リモートでの相談すらも必要ないため、非常に効率的に収益を稼ぐことができるからだ。

今後、メガバンクは三井住友銀行のような体制をとり、資産運用業務を行ってくる可能性が高い。このような体制であれば、本当に収益を狙える富裕層に力を入れることができるからだ。

対面型の銀行の資産運用の相談は価値がないといわれることも多いが、リモートで気軽に相談できるのは、一部の層には非常に評価を得る可能性が高い。なぜなら、資産運用に関する知識がない人たちがまだまだ多いからだ。

まとめ

収益が得られる富裕層を除くと、今後、銀行で対面で相談するのはかなり難しくなるはずだ。ネット銀行やリモート相談をうまく活用し、資産運用の知識を高めていく必要があるだろう。

                    文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)

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