前澤氏のZOZO株売却は「ポストコロナ」の投資行動として正解

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国際宇宙ステーションに滞在して話題になった前澤氏がZOZO株を売却(Photo By Reuters)

ZOZO<3092>創業者の前澤友作氏が、8月19日付で保有する同社株270万株を売却したことが明らかになった。同日の終値3185円で計算すると、売却額は85億9950万円となる。これにより前澤氏の持ち株比率は10.89%から9.99%に下がった。今回の売却は新会社設立プロジェクト「MZDAO」立ち上げのためだが、ポストコロナ時代の投資行動としても「正解」と言える。なぜか。

「コロナ特需」で成長が加速したZOZOだが…

ファッション通販サイトを運営するZOZOは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染爆発に伴う緊急事態宣言などの発令で、リアル(実)店舗が休業または営業時短の短縮を余儀なくされたのに加えて、消費者が外出を自粛した影響などで売り上げが伸びる「コロナ特需」の恩恵を受けた。

ZOZOの2021年3月期連結決算は、売上高が前期比17.4%増の約1474億円、営業利益が同58.3%増の441億円、経常利益が同60.6%増の443億円、当期利益が同64.5%の309億円と大幅に伸びた。

2022年3月期決算も売上高が同12.8%増の1661億円、営業利益が同12.5%増の496億円 、経常利益が同11.9%増の496億円、当期利益が同11.5%増の344億円と好調を維持している。

だが、本格的なポストコロナ時代になれば、ZOZOを潤わせていた「コロナ特需」は消えていくだろう。過去最大の感染者を出した「第7波」では政府や自治体による行動制限が一切なく、小売店の大半は平常通り営業を続けている。

ポストコロナへの「投資切り替え」を急ぐべき理由

日本百貨店協会が23日に発表した7月の全国百貨店総売上高は「第7波」の感染拡大期にもかかわらず、既存店ベースの前年同月比で9.6%増の4391億円と5カ月連続の増加となった。小売業界はすでに「ポストコロナ」の段階に入りつつあるのだ。

ZOZOの株価もコロナ感染が落ち着いていた6月17日の終値で2300円まで下げた後、8月に入ると「第7波」の影響で3000円台に持ち直している。今後「第7波」が本格的に落ち着けば、リアル店舗に顧客が流れる懸念から6月と同水準の2300円前後まで株価が値下がりする可能性もある。

「第7波」がピークを迎えたのを受けた前澤氏のZOZO株を売り抜けは、ポストコロナ時代にふさわしい投資行動と言える。米国ではコロナ特需に沸いたテック銘柄の値下がりが目立つ。日本でもテック系投資で利益をあげてきたソフトバンクグループ<9984>が、2022年4~6月期決算の純損益では一転して3兆1627億円もの巨額赤字を計上している。

投資家やファンドはポストコロナ時代に適応した投資行動をとらなければ「コロナ特需」の崩壊に飲み込まれ、巨額の損失を被ることになる。30年以上前の「バブル崩壊」の轍(てつ)を踏むことになりかねない。まだコロナ「第7波」の余波が残っているうちに「手仕舞い」をした方が良さそうだ。

文:M&A Online編集部

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