1000億円の大台割れ 今年1-6月のヘルスケア業界のM&A

alt
ヘルスケア業界の上半期M&Aは6年ぶりに1000億円の大台割れに(写真はイメージ)

2022年前半のヘルスケア業界(医薬品、調剤薬局・ドラッグストア、医療サービス)のM&Aは、件数・取引金額ともに低迷した。

6年ぶりに取引金額1000億円の大台割れ

M&A Online編集部がM&Aデータベースで、同業界の2022年1-6月のM&A発表案件(適時開示ベース)を集計したところ件数は11件と前年同期より3件少なく、2020年以来3年連続の減少となった。1-6月としては2013年以降の10年間で、最低の10件だった2018年に迫る下から2番目に低迷している。

取引金額も2年ぶりの減少に。前年同期比77.6%減の482億165万円と、大幅減になった。過去10年間では2013年の約225億円、2016年の約268億円に次ぐ下から3番目に終わっている。1000億円の大台を下回るのは2016年以来6年ぶりだ。

昨年2件あった500億円を超える大型案件が、今年はなかったのが響いた。比較的大口が多い医薬品業界のM&Aが昨年の3件から今年は1件に減少したのも影響している。

取引金額トップはウエルシアのドラッグストアチェーン買収

今年前半の発表案件で金額が最も高かったのは、ウエルシアホールディングス<3141>が1月18日に発表した、ドラッグストアチェーンのコクミン(大阪市)を203億9800万円、フレンチ(同)を13億3300万円の計約217億円で子会社化する案件。

ウエルシアHDが買収する両社は兄弟会社で、約200店舗のドラッグストアを展開している。北海道、関東、関西、九州などの主要都市の大型商業施設、空港、駅前駅中、繫華街、住宅地に出店。調剤事業も大学病院や大型総合病院の門前をはじめ、クリニックモールや駅ターミナルなどで営業している。

2番目は島津製作所<7701>が5月31日に発表した、日本水産<1332>の上場子会社である日水製薬<4550>に対して完全子会社化を目的に最大約176億円でTOB(株式公開買い付け)を実施する案件。日本水産の保有分(54.06%)を除く、45.94%の株式取得を目指す。

日水製薬の買付価格は1株につき1714円で、TOB公表前日の終値990円に73.13%のプレミアムを加えた。残りの日本水産が保有する全株式については、日水製薬が自社株式取得する。自社株取得の費用は約201億円。

日水製薬は1935年に日産水産研究所として設立。クジラの肝臓から増血栄養剤、動物胆汁から胃腸薬などを製造した。1962年に現社名に変更し、臨床診断薬、食品や医薬品製造用の産業試薬などを中心に医薬品事業に本格的に乗り出した。1990年に東証2部へ上場し、2006年に東証1部へ昇格。2022年4月には東証プライムへ移行している。

3番目は6月23日にH.U.グループホールディングス<4544>が発表した、同社傘下の富士レビオ・ホールディングス(東京都新宿区)のベルギー子会社Fujirebio Europe NV(ヘント)を通じて、同国のバイオテクノロジーベンチャーADx NeuroSciences NV(同)の全株式を4000万ユーロ(約57億円)で取得し、完全子会社化する案件。

ADxは2011年に設立し、アルツハイマー病など神経疾患関連領域のバイオマーカー(生物指標化合物)開発を手がける。従業員数は約20人。

取引金額の上位5件は以下の通り。

順位 日 付 業 種 取引金額(単位:百万円) 内 容
1 2022年1月18日 調剤薬局・ドラッグストア 21,731 ウエルシアホールディングス、ドラッグストアチェーンのコクミンなど2社を子会社化
2 2022年5月31日 医薬品 17,633 島津製作所、日本水産傘下の日水製薬をTOBで子会社化
3 2022年6月23日 医療サービス   5,738 H.U.グループホールディングス、ベルギーのバイオテクノロジー企業ADxを子会社化
4 2022年6月1日 医療サービス   2,698 新日本科学、非臨床試験のイナリサーチをTOBで子会社化
5 2022年5月12日 医療サービス      400 メドピア、医療事務アウトソーシングのクラウドクリニックを子会社化

文:M&A Online編集部

関連記事はこちら
件数、金額ともに2年ぶりの減少に 今年1-6月の製造業M&A
「過去最多」を更新 IT・ソフトウエア業界の2022年1-6月