ぐるなびにカカクコム・・・大苦戦するグルメメディア

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ぐるなびの本社が入居するビル(東京都千代田区)

飲食店同様に苦境に立たされているのがグルメメディアです。ぐるなび<2440>は2022年3月期第1四半期の売上高が前期比70.2%増の30億3,400万円となったものの、コロナ前の2020年3月期第1四半期の売上高75億5,100万円と比較すると、59.9%もの減少となっています。カカクコム<2371>が運営する食べログの2022年3月期第1四半期の売上高は37億5,400万円で、2020年3月期第1四半期比40.6%の減少。グルメメディアは需要回復を待つばかりで、次なる一手が打ち出せないでいます。

この記事では以下の情報が得られます。

・グルメメディアの状況
・各メディアの取り組み

ぐるなびは楽天の飲食事業部となるか?

ぐるなびは、楽天グループ<4755>とSHIFT<3697>などを引受先とした第三者割当増資を行い、33億円を調達すると8月25日に発表しました。今回の増資によって楽天の保有比率は14.96%から16.84%まで高まります。楽天は2018年7月にぐるなびと資本業務提携契約を締結していました。

2019年に元楽天ブックスの代表取締役社長だった杉原章郎氏が、ぐるなびの代表取締役社長に就任しています。もともとは楽天の経済圏を飲食業界に拡大するための提携でした。コロナ禍で楽天からの支援に頼らざるを得なくなったぐるなびは、その支配下に置かれているように見えます。

ぐるなびは有料加盟店の離脱に苦しんでいます。Go To Eatキャンペーンにより、2020年12月は56,806となり、キャンペーン前の49,469よりも14.8%増加しましたが、2022年6月は54,342と4.6%減少しています。またもじわじわと減少しているのです。

加盟店の離脱を食い止める施策として、2つの柱を打ち出しました。1つ目がデリバリー。2つ目が食材発注システムです。

ぐるなびは2021年7月1日に楽天から「楽天デリバリー」と「楽天リアルタイムテイクアウト」事業を譲受しました。楽天デリバリーは、ぐるなびが譲受した段階で全国12,000以上の店舗から宅配注文できるサービスを構築していました。ぐるなびはこのサービスを宅配機能を持たない飲食店に対して導入を促し、加盟店の獲得と契約解除の回避を狙っています。ぐるなびは調達した資金のうち、5億5,500万円を加盟店獲得費用、2億7,000万円をマーケティング費用に充当する計画です。

飲食店が発注をする食材ECサイトにも注力します。すでに「ぐるなびFOODMALL」を立ち上げており、1,000社のサプライヤーと契約しています。調達した資金の6億円をサプライヤーに対するマーケティング費用にする予定です。

グルメメディアの枠を飛び出そうとしていますが、勢いを欠いている印象は拭えません。デリバリーはUber Eatsと出前館の2強に加え、DiDiフード、フードパンダ、Woltなど、新興勢力の新規参入が激しい業界です。10億円に満たない予算でシェアを拡大するのは、困難を伴うと考えられます。食材発注もインフォマート<2492>という強力なライバル会社が存在します。食材の受発注システムを提供するインフォマートは2021年6月末時点で100万を超える事業所と提携をしています。

ぐるなびは、華々しく新規事業を拡大するというよりも、今の状況を耐え忍んでいるというのが本音でしょう。

ドル箱事業を失ったカカクコム

力強い一歩を踏み出せないのはカカクコムも同じです。コロナ前の食べログ事業の売上高は全体の40%超を占めており、稼ぎ頭でした。

決算説明資料より

しかし、2021年3月期には18.3%まで縮小してしまいます。回復傾向にはあるものの、2021年3月期第1四半期の段階で31.2%に留まっています。2021年4月から6月までのネット予約人数は419万人で、2019年比52.1%の減少となりました。

食べログもデリバリーやテイクアウト、通販サイトの「食べログモール」などの新たな取り組みを行っています。しかし、目に見える成果には結びついていません。カカクコムは屋台骨となる「価格.com」と新興メディアがコロナの影響を受けておらず、業績は安定してきました。一本足打法だったぐるなびとの違いはここにあります。食べログは需要回復を気長に待つ姿勢が鮮明です。

コロナ禍の2020年10月に上場したRetty<7356>は、2021年9月期第3四半期の売上高が前期比14.7%減の14億6,000万円となりました。1億1,000万円の営業損失(前年同期は2,200万円の黒字)を計上しています。店舗の解約率に大きな変動はなかったものの、休業店舗に対して支払いを免除するなどの影響が出ました。

Rettyは加盟店だけでなく、広告コンテンツからの収入もあります。2021年9月期第3四半期の広告の売上高は1億3,700万円で、前期比37%増加しています。当面は広告を上乗せし、需要回復を待つことになりそうです。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由