活字離れで休・廃刊が加速の紙メディア デジタル化も「波高し」

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新聞をはじめとする紙メディアの衰退が止まらない(写真はイメージ)

「活字離れ」がますます激しくなっている。紙メディアで最もメジャーな新聞は2022年10月の発行部数が前年比218万部(6.6%)減の3084万部と、2018年から4年連続で200万部を超えるマイナスとなった。ピークだった1997年の5376万5000部から、4割以上もの激減だ。もちろん新聞以外の紙メディアでも、撤退が相次いでいる。

相次ぐ紙メディアの休止

経営基盤が弱いフリーペーパーやスポーツ新聞は大手紙以上に深刻な打撃を受けている。フリーペーパーを発行する地域新聞社<2164>は、3月7日に埼玉県での新聞発行事業を5月末で休止すると発表した。同社は同県と千葉県、茨城県でポスティング(個別投函)型フリーペーパーの「ちいき新聞」を発行している。

しかし、同社の主要クライアント(広告主)である地元中小企業の広告出稿がコロナ禍の落ち込みから回復せず、2022年8月期には同県エリアで6900万円の営業赤字となった。そのため同県での新聞発行を休止し、ウェブニュースなど経営資源を集中する。

現在の「ちいき新聞」発行エリア。4月からは埼玉県での発行が休止される
現在の「ちいき新聞」発行エリア。6月からは埼玉県での発行が休止される(同社ホームページより)

静岡県内と愛知県豊橋市で地方紙を発行する静岡新聞社(静岡市)は、3月末で夕刊を廃止する。1941年に創刊した同紙は早くも1964年に日祝日の夕刊を廃止、2011年からは土曜日の夕刊も廃止していた。夕刊は廃止するが、購読料金は変わらず事実上の値上げとなる。今後はスマートフォン向けなどのデジタルニュースを充実するという。

デジタル化でも難しいメディアの生き残り

西日本新聞社(福岡市)は1955年に創刊した九州地方初のスポーツ紙「西日本スポーツ」の紙での発行を3月末で休止し、ウェブニュースへ移行する。同紙は福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県で販売され、九州地方のスポーツ情報を中心に報道している。ネットニュースの普及に伴い発行部数が減少したため、紙での発行を断念した。

地方のスポーツ紙では2022年11月末に北海道新聞社(札幌市)が「道新スポーツ」の紙での発行を休止している。事情は西日本スポーツと同様で、一足早くウェブニュースの「DOSHIN SPORTS」へ移行している。

朝日新聞社系の出版社である朝日新聞出版(東京都中央区)は1922年創刊で100年以上の歴史を誇る看板週刊誌「週刊朝日」を5月末で休刊する。

1958年には発行部数が約154万部に達したが、その後は出版社系の週刊誌に人気を奪われ、部数は頭打ちに。近年では活字離れが進み、約7万4000部とピーク時のわずか5%まで部数を減らしていた。今後はウェブニュースや書籍発行に力を入れていく。

各社とも紙メディアの代替サービスとしてウェブニュースへシフトしているが、紙メディアと違って記事の有料化は難しい。広告もウェブメディアの乱立で競争が厳しくなっている。

「ネットメディアの優等生」と高く評価された経済ウェブニュース「NewsPicks」を運営するユーザベース(東京都千代田区)ですら、2023年2月に米カーライル・グループに株式公開買い付け(TOB)で買収された。しかも買収の狙いはNewsPicksではなく、安定した固定収入が得られるデータベースの「SPEEDA」だったと言われている。

ウェブニュースなどのデジタルサービスへ移行しても、メディアビジネスの先行きは極めて不透明なのだ。M&Aでユーザベースのように新たなビジネスチャンスを見いだすか、規模拡大で経営基盤を強化するか、紙メディア企業にも「新たな一歩」を踏み出さなくてはならない時期が迫ってきた。

文:M&A Online編集部

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