第一製パン<2215>が2022年8月15日に、2022年12月期の業績予想の下方修正を発表しました。4億5,000万円としていた純損失額を、8億9,900万円へと大幅に引き下げました。
横浜工場(横浜市)を閉鎖し、同工場の生産を小平工場(東京都小平市)などの関東3工場に集約することを決定。この事業構造改善費用11億4,900万円を2022年12月期第2四半期に計上したためです。
第一パンは拠点を集約することで生産性を向上し、キャラクター商品の売上伸張によって早期の通期黒字化を目指すとしています。
しかし、第一パンは売上高の減少が継続しているうえ、競合他社と比較して原価率が高い傾向にあり、いち早く主力商品である「ポケモンパン」に代わるヒット商品を市場投入するための研究開発、マーケティング強化を進める必要があると考えられます。
この記事では以下の情報が得られます。
・第一パンの業績推移
・競合他社との原価率の比較
第一パンは2016年12月期に4億6,400万円の営業利益を出しましたが、それ以降は一度も本業の稼ぎである営業利益を出していません。また、2016年12月に増収となってからは減収が続いています。
国内のパン市場が縮小しているようにも思えますが、1世帯当たりのパンの年間平均支出額は2016年から堅調に推移しており、むしろ上昇傾向にあります。
2018年のパンの支出額は前年比1.9%増の30,554円、2019年は同5.2%増の32,164円でした。しかし、第一パン2018年12月期の売上高は前期比5.5%減の251億4,500万円、2019年12月期は1.6%減の247億5,100万円でした。
食パンの支出額はコロナ禍で外食が控えられたことにより、2020年は前年比4.1%増の10,327円と好調でした。2021年はやや数字を落としたものの、1万円台をキープしています。この時期も第一パンの売上減に歯止めはかかりませんでした。
競合で売上高が同規模の日糧製パン<2218>は、2021年3月期の売上高が前期比3.2%のマイナスでしたが、翌期は増収。2023年3月期の売上高も前期比1.3%増を予想しています。
業界トップの山崎製パン<2212>は、2020年12月期の売上高が前期比4.3%の減収となったものの、2021年12月期は3.7%のプラス。2022年12月期も増収を予想しています。
第一パンは1998年6月に発売した「ポケモンパン」が主力。このシリーズはもともと山崎製パンから発売する予定でしたが、発売の直前に起こったポケモンショック(テレビアニメの放送中に一部視聴者が光過敏性発作等を起こして救急搬送された放送事故)を受けて撤退。第一パンが手掛けることになりました。
「ポケモンパン」のヒットにより、第一パンはプリキュアやミニオンなど、人気アニメの登場人物などを起用したパンを次々に開発し、キャラクター商品が売上高を支えるようになりました。
しかし、キャラクターのライセンス料が、第一パンの利益を押し下げている可能性があります。
第一パンの2022年12月期第2四半期の原価率は74.5%。小麦やエネルギー価格の高騰でパン製造コストは上がっていますが、競合他社と比較して第一パンの原価率の高さが目立ちます。
山崎製パンのようにパンの製造量が多く、規模の大きな会社であれば大量仕入れによって原料価格を抑制することができます。しかし、第一パンと同規模の日糧製パンは71.9%、売上高60億円規模のコモ<2224>の原価率は69.0%。両社ともにパン製造業界の平均的な水準である70%近辺に留まっています。
ライセンス契約の内容にもよるものの、ゲームやアニメのキャラクター使用料は売上の4~6%というのが一般的。その分、利益を押し下げる要因になります。
第一パンは2016年12月期に4億6,400万円の営業利益を出しました。原価率は72.6%。このとき、第一パンはロングセラー商品「大きなデニッシュ」の産地限定商品、姉妹品等の販売が好調でした。その一方で、主力となるキャラクター商品の売れ行きは軟調でした。
横浜工場の閉鎖で一時的に大赤字となりますが、中長期的には労務費などが削減されて原価率が下がることは間違いないと考えられます。
第一パンは2009年12月、豊田通商<8015>に対して第三者割当増資を行い、持分法適用会社となりました。増資後にトヨタ自動車<7203>の生産方式を取り入れ、生産効率を改善して再建を果たした過去があります。
これ以上の生産体制の効率化を図るのは難しいでしょう。
第一パンは売上高の回復が急務であり、キャラクターものに次ぐヒット商品を生み出さなければなりません。また、原価率が抑えられる食パンの販売数を伸ばすため、マーケティングにも力を入れなければならないと考えられます。
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