東京の地下鉄駅はウクライナのようにシェルターとして使えるか?

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有事に東京の地下駅はシェルターとなるのか?

ウクライナ侵攻で、ロシア軍による爆撃から身を守るため地下鉄の駅に避難する首都キエフ市民の様子が報じられている。一方、3月24日には北朝鮮から発射された弾道ミサイルが、日本のEEZ(排他的経済水域)の内側に落下した。わが国にとっても、空からの攻撃は他人事ではない。日本の首都・東京の地下駅は、キエフ同様にシェルターとして利用できるのだろうか?

キエフの地下鉄駅は大型核兵器の攻撃にも耐えられる

地下駅がシェルターとして機能するかどうかは、攻撃が通常兵器なのか核兵器なのか、あるいはミサイルか砲撃かでも異なる。さらに駅自体の構造が通常の建築物か、シェルターを想定した鉄筋コンクリートの分厚い防護壁を備えているかどうかでも変わってくる。

最も脅威なのは核兵器による攻撃だ。国際連合広報センターによると、20メガトン級の大型核弾頭が地表で爆発した場合は半径800メートル、深さ90mの巨大な穴が開くという。

通常兵器の場合、最も最深度まで破壊できるレーザー誘導地中貫通爆弾で「バンカーバスター」と呼ばれる「GBU-28(The Guided Bomb Unit 28)」は、地表から30m(鉄筋コンクリート防壁がある場合は6m)までの目標を破壊できる。

(M&A Online編集部作成)

キエフのアルセナーリナ駅の場合、地上から105.5mの深さがある。仮に駅の真上の地表で20メガトン級の大型核兵器が爆発したとしても、持ちこたえることが可能だ。鉄筋コンクリートなどの防護壁が設けられているとしたら、駅内部への衝撃も相当抑えられるだろう。

核シェルターとしても機能するアルセナーリナ駅(キエフ地下鉄ホームページより)

東京でも新しい路線の地下駅ならば耐えられるかも

東京の場合、20メガトンの核爆発に耐えられる地下駅は存在しない。ただ、北朝鮮はメガトン級の大型核兵器を保有しておらず、最大規模の核実験でも120キロトン。ミサイル搭載可能な核弾頭となると、長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」と同等の20キロトン前後と見られている。

さらに都市を破壊する目的ならば、地表よりも上空で爆発させる方が効果が高い。仮に大型核弾頭だったとしても、上空で爆発した場合は地下への衝撃が小さくなるため、東京の地下駅のような浅い深度でも衝撃に耐えられる可能性はある。

ただし、うまくいっても爆発時の衝撃に耐え得るだけで、放射線による被害に対して有効かどうかまでは分からない。過信は禁物だ。

東京の地下駅深度ベスト10

路線 駅名 深度(m)
1 大江戸線 六本木駅 -42.3
2 大江戸線 東中野駅 -38.8
3 千代田線 国会議事堂前駅 -37.9
4 南北線 後楽園駅 -37.5
5 大江戸線 新宿駅 -36.6
6 半蔵門線 永田町駅 -36.0
7 副都心線 東新宿駅 -35.4
8 大江戸線 中井駅 -35.1
9 JR総武本線 馬喰町駅 -34.4

通常兵器であれば、東京の地下駅でもシェルターとして機能するだろう。もし、逃げ込むとしたらどこの駅が良いのか?東京で最も深い場所にあるのは、都営大江戸線の六本木駅で地下42.3mの位置にある。ただ、緊急時に離れた場所から六本木駅に避難するのは現実的ではない。最寄りの地下駅に避難するのがセオリーだ。

とはいえ、同じ駅でも深度が違ったり、最寄りに複数の駅が存在したりするケースもある。生存率を高めるためには、より深い位置にある地下駅に避難するのが望ましい。そのためには路線が目安になる。基本的に新しい路線ほど深い位置に建設されている。これは既存の地下鉄や地下構造物を避けるため、より下部に建設されているためだ。

トンネル部の最大深度は最も古い1937年開通の銀座線で16mだったが、1964年開通の日比谷線からは20m台となる。1969年開通の千代田線で30m台となり、平成に入って完成した1996年開通の南北線からは40m台に。最も新しい2000年開通の都営大江戸線は49mと50mに迫っている。有事に避難するのなら、新しい路線の地下駅が望ましいようだ。

国土交通省「新たな都市づくり空間 大深度地下」より

文:M&A Online編集部

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