買収したり、提携したり…あの手この手で生き残る「洋服の青山」

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「アパレル冬の時代」と言われて久しい。とりわけ紳士服はカジュアル化の流れに加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で自宅でのリモート勤務が増えたこともあり需要が激減。紳士服量販店チェーン「洋服の青山」を展開する業界最大手の青山商事<8219>も大打撃を受け、生き残りに必死だ。

紳士服市場の縮小に100円ショップで対抗

青山商事の2021年3月期決算は売上高1614億400万円、営業赤字は144億400万円、経常赤字は 114億3600万円、当期赤字は388億8700万円と「どん底」に落ち込んだ。売上高は2017年3月期の2527億7700万円から1000億円近く落ち込み、今後も紳士服頼みでは成長の見込みは薄い。そこで同社が乗り出したのが経営の多角化だ。

青山商事は2016年に100円ショップのダイソーを展開する大創産業(広島県東広島市)と販売代理店契約を締結。雑貨販売事業を手がける子会社の青五(同福山市)に大創産業から35%の出資をしてもらい、「ダイソー&アオヤマ 100YEN PLAZA」を展開することにした。

店舗の多くは「洋服の青山」の一部もしくは居抜きだ。「洋服の青山」は幹線道路沿いのロードサイド店舗が多く、自動車が「生活の足」となっている地方では100円ショップの好適地と重なる。青山商事は不採算店舗のリプレース(業種転換)や売場の一部を賃貸することで、不振の紳士服に替わる収益を見込む。

不採算店舗を100円ショップで「宝の山」に(同社ホームページより)

青山商事の本社に近い「福山本店」では、2階フロア全部をダイソーに転用している。店舗内や居抜きでの進出だけに、用地探しと建設が不要で出店スピードは早い。2021年8月末現在で全国に112店舗を展開。ダイソーのフランチャイズ店は約800店舗なので、その14%が青山商事系ということになる。ダイソー店舗網の「一大勢力」と言っていいだろう。

奇手に見えて実は「原点回帰」

もちろん青山商事は本業のアパレルでも新規事業に着手している。2月28日にオーダースーツブランド「麻布テーラー」で知られるエススクエアード(大阪市)の全株式を取得し子会社化すると発表した。エススクエアードは持ち株会社で、傘下にオーダースーツ事業のメルボメンズウェアー(大阪市)と製造部門のメルボ紳士服工業(同)を置く。取得価額は非公表。取得予定日は2022年4月1日だ。

メルボメンズウェアーが展開する「麻布テーラー」は高いブランド力で知られる。1964年の東京五輪日本選手団のブレザーを手がけたことでも有名だ。ビジネス衣料のカジュアル化は進んでいるが、経営者や上級管理職のスーツ需要は高い。彼らは高所得者層でもあり、高価なオーダースーツの固定客でもある。付加価値の高いオーダースーツで、本業の紳士服事業の収益を補うのが買収の狙いだ。

このほかにも2月15日にハッチ・ワーク(東京都港区)の月極駐車場オンライン管理システム「アットパーキングクラウド」を利用して、「洋服の青山」の店舗駐車場を月極駐車場として貸し出している。まさに「あの手この手」での生き残り策だ。

青山商事の1964年の創業時には紳士服だけでなく、食料品や広島県の特産品などを手広く販売していた。最近の多角化の動きは苦し紛れの奇手ではなく、同社の「原点回帰」と言えるかもしれない。

「洋服の青山」の来店者駐車場を月極駐車場として貸し出している(ハッチ・ワークのプレスリリースより)

文:M&A Online編集部

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