レオス・キャピタルワークス(千代田区)は、2003年に設立された資産運用会社です。国内の中小型株を中心に投資をする「ひふみ投信」が広く知られており、個人投資家を中心に熱狂的なファンを抱えています。ひふみ投信の運用成績は3年で22.61%。同期間のTOPIX4.19%と比較すると十分な運用成果を出しており、アクティブ投資の本領を発揮しているファンドです。
レオスは2018年12月にマザーズ市場で上場を予定していましたが、突如延期しました。その後、2020年4月にSBIホールディングス<8473>がレオス株の51.28%を取得して連結子会社化しています。独立系資産運用会社らしい独自の運用哲学が魅力だったレオスの持ち味が薄れるのではないかと、一部のファンから心配の声も上がっています。
個人投資家から根強い人気があるレオス・キャピタルワークスとはどのような会社なのでしょうか?この記事では以下の情報が得られます。
・レオスの概要
・運用実績、投資先、投資の方針
レオスは2003年に現在の代表取締役社長・藤野英人氏、運用本部長の湯浅光裕氏、社長室長の五十嵐毅氏などが中心となって立ち上げた会社です。藤野氏は1990年に早稲田大学を卒業後、野村アセットマネジメントに入社。1996年にJPモルガン・アセット・マネジメント、2000年にゴールドマン・サックス・アセットマネジメントに移籍しています。
現在、6つのファンドを組成しています。主に国内の上場銘柄に投資する「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」と、日本以外の国の株式に投資をする「ひふみワールド」「ひふみワールドプラス」。そして、一般投資家向けの私募ファンド「レオス日本小型株ファンド」です。いずれの投資信託も大型株ではなく、中小型株が中心。とりわけ成長著しい企業に投資をしています。
藤野氏は明治大学商学部の講師、東京理科大学上席特任教授などを務めており、教育に熱を上げています。投資教育の普及は企業理念にも盛り込まれています。インデックス投資ではなく、成長企業へのアクティブ投資にこだわる背景には、多くの人に投資の妙味を知ってほしいという願いが込められているのです。
直近の営業収益は60億9,900万円、営業利益は14億7,500万円となりました。営業利益率は24.1%。ファンドらしい高利益体質の会社です。
■業績推移(単位:百万円)
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | |
営業収益 | 3,853 | 6,157 | 6,099 |
営業利益 | 1,147 | 1,791 | 1,475 |
純利益 | 983 | 1,175 | 962 |
※レオス・キャピタルワークス「財務情報等」より筆者作成
2019年に新商品となる「ひふみワールドプラス」の運用を開始し、委託者報酬が増えたことで、営業収益が59.8%増となりました。
投資顧問業務に留まらない点もレオスの特徴です。「ひふみ投信」と「レオス日本小型株ファンド」は、委託販売とともにレオス自身が直接販売も行っています。委託者報酬と間接・直接販売手数料で収益を得ているのです。
2008年10月に運用を開始した看板商品「ひふみ投信」は、2017年末までTOPIXを毎年上回る運用成績を残しました。2013年には68.0%もの成果を出し、新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年はTOPIXがマイナスに転じていますが、ひふみ投信は11.5%と二桁の収益率を叩き出しています。
ひふみ投信はアナリストが企業を実際に訪問し、経営陣との面会をした上で投資判断を行っています。この泥臭さを前面に出した投資スタイルが、多くのファンを引き付けました。一体、どのような企業に投資をしているのでしょうか。
■組入比率上位銘柄(2020年9月末時点)
銘柄 | 業種 | 組入比率 |
ショーボンドホールディングス<1414> | 建設 | 1.88% |
SHIFT<3697> |
情報・通信 | 1.54% |
東京センチュリー<8439> | 金融 | 1.43% |
アマノ<6436> | 機械 | 1.29% |
協和エクシオ<1951> | 建設 | 1.25% |
Zホールディングス<4689> | 情報・通信 | 1.22% |
ソニー<6758> | 電気機器 | 1.22% |
富士通<6702> | 電気機器 | 1.17% |
ジャフコ<8595> | 証券 | 1.17% |
プレミアムウォーターホールディングス<2588> | 食料品 | 1.16% |
※月次報告書より筆者作成
組入比率トップはショーボンドホールディングスとなっています。ショーボンドは2020年6月期の売上高が前期比11.1%増の675億9,000万円、営業利益が10.3%増の129億3,000万円と絶好調。高速道路の大規模修繕工事に取り組んでいる他、老朽化したインフラ修繕の注文が国や自治体から相次いでいます。
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年12月時点では、組入比率トップ(2.30%)は東京センチュリーでした。東京センチュリーは航空機のリースなどを手掛けている会社。航空機需要が緊縮したことを受けて、出資比率を1.43%まで下げました。
2位のSHIFTは急速に保有比率を高めた銘柄です。2019年末時点での保有比率は0.9%でした。SHIFTは2020年8月期の売上高が前期比47.0%増の287億1,200万円、営業利益が52.8%増の23億5,300万円。更に2021年8月期の売上予想が56.7%増の450億円、営業利益が44.5%増の34億円と快進撃を続けています。事業内容はソフトウェアの品質保証です。多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれ、生産性を上げるためのIT技術導入が進むと予想されます。それに伴い、SHIFTのサービスは今後も需要が拡大するとみられています。また、モバイルゲームやソーシャルゲームのバグを見つけるデバッグも受注しており、スマートフォンゲーム市場の拡大による増収増益にも期待できます。
2018年12月25日に上場するはずだったレオスは、その月の20日に延期すると突如発表しました。コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性について深堀りすべき事項が発生した、というのがその原因。主幹事のみずほ証券から延期の要請があったとしています。
その後、なぜSBIホールディングスの傘下に入ったのでしょうか。
SBIは以前からM&Aによる資産運用事業への進出を明言しており、その候補にレオスがあがりました。レオスは委託販売パートナーとしてSBIとは古くから付き合いがあり、SBIの膨大な顧客基盤による販売強化が狙えます。
SBIが買収した背景には、レオスが新型コロナウイルスで経営危機に陥ったのではないか、との憶測が流れました。しかし、M&Aの交渉は2019年秋から始まっていたと代表の藤野氏が否定しています。また、株式は既存株主からの譲渡となり、会社の資金になるものでもありませんでした。
買収後も経営陣や運用チームに変更はありません。SBI傘下に入ったとはいえ、これまで通りの投資スタイルを貫くとしています。
文:麦とホップ@ビールを飲む理由