「セブン&アイ」が小売りトップの座に「イオン」をM&Aで逆転 

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東京都千代田区のコンビニ店舗

スーパーやドラッグストアなどを運営するイオン<8267>に代って、コンビニやスーパー、百貨店などを運営するセブン&アイ・ホールディングス(HD)<3382>が小売業界トップの座についた。

2022年2月期の売上高が8兆7159億5700万円(前年度比1.3%増)だったイオンに対し、セブン&アイ・HDは8兆7497億5200万円(同51.7%増)と、337億9500万円上回った。

セブン&アイ・HD が2021年5月に、米国でガソリンスタンド併設型のコンビニエンスストア事業を手がける「スピードウェイ」(オハイオ州)を買収した結果、2022年2月期に海外コンビニ事業が前年度比2.3倍の5兆1943億2700万円に急拡大したのが売り上げを押し上げた。

一方のイオンは2022年1月5日に、100円ショップ事業を展開するキャンドゥ<2698>を子会社したが、2022年2月期の業績に与える影響は小さく、M&Aで大きな差がつく形となった。

2023年2月期の売上高はイオンの9兆円に対し、セブン&アイ・HDは9兆6530億円で、両社の差は一段と広がる見込みだ。

ただセブン&アイ・HDは百貨店事業の売却を検討しており、実現すればトップの座が再度入れ代わる可能性もある。両社のつばぜり合いはしばらく続きそうだ。

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ヘルス&ウエルネスなどが好調に推移

前年度比1.3%の増収となったイオンの2022年2月期の営業利益は、1743億1200万円(同15.8%増)、経常利益1670億6800万円(同20.4%増)と2ケタの増益となった。当期利益は前年度の710億2400万円の赤字から65億400万円の黒字に転換した。

主力のGMS(総合スーパー)事業とSM(スーパーマーケット)事業は減収となったものの、調剤併設店舗の拡大や積極的な新規出店を推進したヘルス&ウエルネス事業が増収増益となったほか、前年度に落ち込んだデベロッパー事業やサービス・専門店事業も堅調に推移したことで、売り上げ、利益ともに回復した。

2023年2月期はさらに収益力が回復する見込みで、増収となるほか、営業利益は2100億-2200億円(同20.5-26.2%増)、経常利益は2000億-2100億円(19.7-25.7%増)、当期利益は250億-300億円(同3.8-4.6倍)と大幅増益の見込み。

海外コンビニ以外は減益

一方、大幅な増収となったセブン&アイ・HDの2022年2月期の営業利益は3876億5300万円(同5.8%増)、経常利益は3585億7100万円(同0.3%増)、当期利益は2107億7400万円(同17.6%増)だった。

海外コンビニ事業のほかにも、国内コンビニ事業や売却の対象となっている百貨店・専門店事業(2022年2月期の売上高は7122億8200億円)が増収となった。

ただ利益は、海外コンビニ事業以外は減益で、百貨店・専門店事業は81億5300億円の営業赤字だった。

2023年2月期は売り上げの伸びに伴い、利益も2ケタの伸びを見込んでおり、営業利益は4300億円(同10.9%増)、経常利益は4020億円(同12.1%増)、当期利益は2400億円(同13.9%増)の予想。

セブン&アイの買収金額はイオンの10倍

セブン&アイ・HDが買収したスピードウェイは、全米に約3900店舗を持つ業界3位(2020年8月3日発表時)。セブン&アイ・HDは、全米トップの約9800店舗を展開(同)しており、スピードウェイを傘下に収めたことで、スケールメリットを生かしたコスト低減や顧客基盤の強化などを進めている。

イオンが子会社化したキャンドゥの2023年2月期(決算期変更に伴い15カ月決算)は売上高962億円、営業利益12億4000万円、経常利益13億3000万円、当期利益2億3500万円の見込み。

買収金額はイオンが211億円で、セブン&アイ・HDはその10倍の2兆3232億円だった。両M&Aの規模の違いが、トップの交代につながった。

文:M&A Online編集部