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【M&Aインサイト】M&Aにおける人材流出リスク:人材リテンションの理論と実践

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M&Aにおける人材流出リスク:人材リテンションの理論と実践

・M&A時には人材リテンションを目的としたリテンションボーナス(インセンティブ)が活用される
・M&Aトランザクションにおいては、約7割の企業がリテンションボーナスを活用しているが、リテンションボーナスの対象範囲はエグゼクティブ、シニアマネジメント層にとどまらず、より広範囲となっている
・テクノロジー業界のCEOとその配下の経営陣に対するリテンションプランは、マーケットの中央値よりも平均で49%高い

M&Aを通じた投資の最大化に向け、リテンションプログラムの導入は、一般的によくみられる施策である。 マーサーがこの度発表したレポート 『M&Aにおける流出リスク:人材リテンションの理論と実践』では、ディールの戦略推進とプロセス上、人材獲得は極めて重要であり、世界各国企業のうち71%が金銭的なインセンティブを活用していると、報告されている。

一方、同リサーチでは、文化や業界の動向により、リテンションの在り方は大きく異なり、こうした差異を理解し、活用することが中長期的なディールの価値創出に向けて重要であるとしている(図1参照)。

図1 リテンションボーナスの普及率

出典:Flight Risk in M&A: The Art and Science of Retaining Talent – 2017 Mercer Research Report

「世界のM&Aを俯瞰してみると、ディールを実現させるために、記録的な水準のEBITDAマルチプルを買い手が支払っていることが分かります。オペレーション面で卓越した業績を創出するためには、適材が必要となりますが、時間、コスト、戦略適合性の重要な観点を踏まえて、適切な金銭的なインセンティブを検討するために、マーサーのリサーチをご活用いただきたいと思います」 とマーサーのグローバルM&Aトランザクションサービス部門リーダーであるジェフ・コックスは述べている。

対象は経営層だけではない

本リサーチにおいて、リテンションプログラムは、経営層のみならず、より広範囲な層に対しても適用されていることが判明した。経営層以外のリテンションボーナスの対象者として、70%の企業が「インテグレーション上、重要な従業員が対象」、35%が「インテグレーションには関係しない従業員」と回答している(図3参照)。 後者は2012年のレポートと比較すると150%の上昇となる。 マーサーの北米役員報酬プラクティスリーダーであるグレッグ・パッシンは「入念に検討され導入されたリテンションプランは、ディールの価値を最大化するための一種の保険として捉えられている」と言及している。

『M&Aにおける流出リスク:人材リテンションの理論と実践』 レポートは、243名の事業会社のエグゼクティブ並びにプライベートエクイティのプロフェッショナルからの回答、82のインタビュー結果を基に作成されている。 回答企業の69%は5,000人以上の従業員を擁し、77%は年間のグローバルの売上は$1 billion超である。本レポートは、直近のマーサーのレポート『M&A取引における人事リスク調査レポート』 における調査結果(従業員のリテンションが最も重要なリスクである)をふまえて、実施されている (図2参照)。

図2 人材に関連した問題トップ5 (上位順)

出典:Flight Risk in M&A: The Art and Science of Retaining Talent – 2017 Mercer Research Report

ディールが起こる場所による違い

マーサーのリサーチからは、ディールの場所や業界が、リテンションの検討における主要変動要素であることが分かった。こうした違いは人材の流出リスク回避と、適切な水準のリテンションコストの設定において、考慮されるべき事項である。 特定の業界においては、金銭的なインセンティブの支払いは慣行化している。例えばテクノロジー業界においては、全階層にわたり平均で中央値より49%高い水準のリテンションプランが用意されている。

・米国 – 非米国企業は米国企業と競争するために、リテンションに大きなコストをかけなくてはならないと認識している、特に競合である米国企業が上場していて、株式報酬を提供できる場合、それは特に顕著な傾向となる。米国における、リテンションボーナスは、世界で最も高水準である
・カナダ – 買い手は米国での検討を踏まえて、北米全体をカバーすべきと考えがちであるが、これは正しい認識ではない。カナダの支払いはより控えめであり、カナダに最適な水準を検討する必要がある。リテンションプログラムの普及率も米国と比べると低い(米国73%に対してカナダは63%)
・英国、欧州 – 欧州の買い手は米国の買い手と比較すると、金銭的なインセンティブの提供に対してより慎重である(67%)。欧州の買い手のうち41%は、シニアマネジメント以外の中長期的な成功に重要な従業員に対して、リテンションボーナスを提供している。
・アジア – アジアの買い手は、アウトバウンドのディールにおいて、リテンションボーナスの活用が必要であると考えている(94%)。日本に関しては、89%の買い手がリテンションボーナスを支給しており、最も高い普及率であるといえる。日本の買い手は、国外マーケットにおけるマネジメント能力不足から、典型的にはローカルのマネジメントを1~3年リテインする。シニアマネジメントを重視することは重要であるものの、中長期的には将来的なリーダーを見極め、育成することが必須である。

マーサーのリテンションフレームワーク

年間約1,200件以上のトランザクションの支援実績に基づき、マーサーは「リテンションフレークワーク」を作成した(図4)。 企業は同フレームワークに基づき、リテンションプログラムを策定する上での主要な4要素の検討を進めることができる。

図4 マーサーのリテンションフレームワーク

出典:Flight Risk in M&A: The Art and Science of Retaining Talent – 2017 Mercer Research Report

『M&Aにおける人材流出リスク:人材リテンションの理論と実践』 レポートのエグゼクティブ・サマリ (概要)の日本語版は、以下のリンクより無料でダウンロードいただけます
サマリー(日本語) ダウンロード

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