宅配便の「ヤマト」と「佐川」業績見通しの「強・弱」はどこから生まれるのか

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宅配便大手のヤマトホールディングス<9064>と佐川急便を傘下に置くSGホールディングス<9143>の業績見通しに「強・弱」が現れてきた。

ヤマトは2024年3月期に3期ぶりに営業増益に転じる見通しなのに対し、SGは2024年3月期に2期連続の営業減益を見込む。

両社はともに世界経済が減速傾向にあることや、原材料価格やエネルギー価格の上昇に伴うコストアップ傾向などの認識が一致しているほか、2023年4に宅配便の料金値上げに踏み切るなど、環境に大きな違いは見られない。

「強・弱」の差はどこから生まれるのか。両社の2023年3月期の決算を見てみると。

値上げと物流ネットで大幅増益へ

ヤマトの2023年3月期の売上高は1兆8006億6800万円で、前年度より0.4%増えた。EC(電子商取引)需要の増加に対応したことで荷物の取り扱い数量が増えたことなどが増収につながった。

営業利益は600億8500万円で、前年度から22.2%もの減少となった。人件費や燃料費、電気代などの上昇に加え、EC物流ネットワークや既存のネットワークの輸配送オペレーションの適正化を進めるための費用が増加したことから、20%を超える減益となった。

2022年3月期は5.8%の増収、16.2%の営業減益で、この2年間は増収基調にありながらも、連続で営業減益に陥っていた。2024年3月期はこの流れが変わるとの見通しで、宅配便の値上げと物流ネットワークの強化を武器に、3%強の増収(売上高1兆8600億円)と30%を超える営業増益(営業利益800億円)を目指す計画だ。

ヤマトホールディングス
2024年3月期は予想

国際物流が減益要因に

一方、SGの2023年3月期の売上高は1兆4346億900万円で、前年度より9.7%減少した。宅配便の取り扱い数量が減少したのに加え平均単価も低下。さらに海上、航空などの国際物流の取扱量も大幅に減少したことなどが響いた。

営業利益は1352億7500万円で、前年度から13.1%の減少となった。減収による利益の減少のほか、人件費やエネルギー価格、外注費などの費用が上昇したことから2ケタダウンを余儀なくされた。

2022年3月期は21.1%の増収、53.1%の営業増益、2021年3月期は11.8%の増収、34.8%の営業増益と、この2年間は連続で2ケタの増収営業増益を達成するなど順調に推移していたのが2023年3月期は一転して減収営業減益に陥った。

同社ではこの流れが続くものと予想しており、宅配便の値上げを実施し宅配需要も緩やかに増加すると想定するものの、国際物流の先行きが不透明であることや従業員給与の引き上げなどに取り組むことなどから2024年3月期は4%弱の減収(売上高1兆3800億円)と、20%を超える営業減益(営業利益1055億円)を予想する。

国際物流を含むロジステック事業の売上高は総売上高の22%ほどを占める。どうやら、この事業の見通しが両社の「強・弱」の差となって現れているようだ。

SGホールディングス
2024年3月期は予想

文:M&A Online