値上げに走るユニクロを食う?アパレルネット通販SHEINとは

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「秋から大幅値上げするユニクロを食うのではないか」。アパレルのニューカマー(新規参入者)が注目されている。その名は「SHEIN(シーイン)」。格安のファストファッションでグローバル展開し、「中国のZARA」とも呼ばれる。どんな会社なのか?

220カ国に展開し、売上高はユニクロを上回る

同社は実店舗を持たないネット通販事業者だ。2021年の売上高は約157億ドル(約2兆1385億円)、ユニクロを展開するファーストリテイリング<9983>の2021年8月期連結売上高2兆1329億円を上回っている。SHEINの時価総額は1000億ドル(約13兆6213億円)を超えたとされ、ファーストリテイリング(7兆3700億円)の2倍近い。

同じアパレルネット通販のZOZO<3092>との比較では、売上高で約13倍、時価総額では18倍だ。なぜ同じアパレルネット通販で、ここまで差が開いたのか?その理由は展開する国の数だ。SHEINは世界220カ国展開している。意外にも巨大市場で進出していないのは、本拠地の中国。中国で「SHEIN」は、ほとんど知られていないという。

2020年12月から日本語での販売サイトをオープン。今年に入ってLINEの公式アカウントを開設したほか、東京ガールズコレクションに参加するなど日本での存在感を高めている。Tシャツが486円、ドレスが1790円と安いが、同社の通販サイトにアクセスすると様々な割引チケットが表示され、5月下旬から始まったサマーセールでは「最大80%OFF」「2点購入で1点が99%OFF」といった大幅値引きを打ち出している。

低価格で若者から支持を集めているSHEIN(同社ホームページより)

競争力の源泉は価格ではなく、ITシステム

ただ、安いだけではない。ブランドイメージづくりにも成功している。「アメリカ発のグローバルファッションブランド」と自称するだけに、米国のZ世代(1990年半ばから2010年代生まれの世代)にアピールするデザインとなっており、現地のインフルエンサーを大量に起用したSNSでの情報発信で販売を伸ばした。

しかし、SHEINの最も強力な「武器」は、ビッグデータとAI(人工知能)を駆使したデータ分析に基づくマーチャンダイジングとサプライチェーン管理システムだ。同社は知衣科技(ジーイー)が開発したSaaS「AIアシストデザイン」で、デザインや生地、色彩などのトレンドを予測している。

自社で生産設備を持たない同社は1500社近いサプライヤーを抱えており、同社独自の「SCMシステム」を通じて商品の販売状況をリアルタイムで生産現場と共有。売れ行きに応じて自動的に在庫調整や生産を支持する。

サプライヤーを中国広州市番禺区に集中させることで、新商品の企画から出荷まで平均2週間と、競合するグローバルファストファッションブランドの半分以下となるリードタイムを実現した。

1日で2万5000点を超える新製品を投入することもあるが、これはファストファッション大手ZARAの1年間の新商品数に匹敵する。新商品の数と展開スピードは圧倒的で、これが若い消費者の支持を集めた。自社サイトで販売している商品数は60万点以上という。

日本では6月18日から7月17日にかけて「SHEIN POPUP ~JAPAN TOUR 2022~」を名古屋、広島、大阪、福岡、新潟の全国5都市で開く。同社で販売する商品をコーディネートしたマネキンを展示するほか、1万円の高額ギフトカードなどが無料で当たる「SHEINガチャ」などのイベントを実施する。

今後の円安次第では、これまで通りの低価格を実現できないかもしれない。しかし、商品を輸入に頼っているのは、ユニクロやZOZOなどの国内アパレルも同じ。価格の優位性は変わらないだろう。価格以外の強みもあり、SHEINの快進撃は続きそうだ。

文:M&A Online編集部

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