トヨタ子会社チームが公道を暴走した「GRヤリス」ってどんな車

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サーキットでなければ「暴走」と非難されるのも当然だろう。トヨタ自動車<7203>の子会社であるアイシン<7259>のレーシングチーム「AISIN RALLY TEAM with LUCK」の競技車両が3日、公道で危険行為を繰り返していたことが明らかになった。アイシンは同チームの活動休止を発表し、謝罪した。事件を起こした競技車両のベース車は「GRヤリス」。どんなクルマなのだろうか?

全日本ラリー選手権で存在感を示す

事件はJAFラリー選手権の第2戦「ツール・ド・九州 2022 in 唐津」のレース区間と次のレース区間を結ぶ一般道で起こった。アイシンによると「先⾏していた競技⾞から追い越しを促された際、道路交通法上の追い越し禁⽌区間にもかかわらず追い越しをかけた」「追い越し直後に左折すべき三差路を⾒落とし、ハンドルを切り対向⾞線にはみ出しながら左折したため、⾛⾏中の⼀般⾞両の進⾏を妨げ危険な⾛⾏をした」という。

このラリーで存在感を示しているのが「GRヤリス」、JN1クラスやJN5クラスに参戦する人気車だ。「ヤリス」はトヨタのエントリーカーで、1999年に「ヴィッツ」として発売された。「ヤリス」は海外での車名だったが、日本でも2020年のフルモデルチェンジを機に統一した。

「ヤリスWRC」で世界ラリー選手権に復帰

「ヤリス」はトヨタが2017年に復帰した世界ラリー選手権(WRC) で、豊田章男トヨタ社長が総代表を務める「TOYOTA GAZOO Racing WRT(World Rally Team) 」のレース車両に採用。以来、「ヤリスWRC」として、2021年まで参戦する。その後継車両が、今年からWRCに参戦した「GRヤリスWRC ラリー1」だ。

「GRヤリス」は市販もされている。「ヤリス」の最上級グレードだが、その他のグレードとは全くの別物と言ってよい。車体は3ドアハッチバック(通常の「ヤリス」は5ドアハッチバック)で、ルーフトップをカーボン製にするなど軽量化や低重心化、剛性強化を実現している。

エンジンも専用設計されており、総排気量は通常の「ヤリス」よりも100cc大きい1600ccの水冷直列3気筒DOHCターボエンジン「16E-GTS」型を搭載している。最高出力(ネット)272馬力、最大トルク370 N・m (37.7 kgf・m)の競技仕様で、0 ー100 km/h加速は5.5秒以下、最高時速230 kmを叩き出す。

通常の「ヤリス」は最も強力な「M15A-FKS」型エンジンで最高出力120馬力、最大トルク145N・m (14.8kgf・m)だから、2倍以上の高出力エンジンだ。

価格も通常の「ヤリス」が139万5000円〜252万2000円(税込、以下同)なのに対し、「GRヤリス」は265万円〜456万円と段違いに高い。それでもトヨタによると、4月1日時点で「GRヤリス」は6ヵ月以上の納車待ちで、通常の「ヤリス」に比べて2〜3カ月長いという。

文:M&A Online編集部