「米FRBを動かした」と話題騒然、「ジブリの法則」は本当か?

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ジブリ作品はパウエルFRB議長をも動かすのか?(Photo By Reuters)

アノマリー(合理的な説明のつかない相場変動)か、それとも闇の国際金融シンジケートの陰謀か…。29日の日経平均株価はニューヨーク株式市場の暴落を受けて、一時800円も値を下げ、終値でおよそ3週間ぶりに2万8000円を割り込んだ。そこで個人投資家の間で囁かれているのが「ジブリの法則」だ。果たして真実なのだろうか?

パウエル「利上げ継続」発言も「ジブリ」が原因?

「ジブリの法則」とは金曜日夜にテレビでジブリ作品が放映されると、その週明けに大幅な株価下落が起こるというジンクスのこと。前週金曜日の26日夜には「耳をすませば」(1995年初公開)が日本テレビの「金曜ロードショー」で放送されていた。

すると米国時間の26日夜、ジェローム・パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長が講演で「我々は需要を抑えるため、強力で迅速な手段を取っている。やりとげたと確信できるまで続行する」とインフレ抑制のための利上げを継続すると明言。これを受けた株式市場が、景気後退懸念から大幅な株安となったのだ。

世界金融で「決戦は金曜日」の理由

タネを明かせば、このジンクスは個人投資家の間でもSNS上の「ネタ」となっており、信憑性は全くない。金曜日は金融当局の要人や政治家から景気を左右する発言が飛び出す傾向がある。これは土日は市場が休みなので、平日と違い投資家が冷静に判断できる「冷却期間」を持てるためだ。

大型合併のような株価を大きく左右する案件が、金曜日の株式取引終了後に発表されるのも同じ理由だ。そのほかにも金曜日には米雇用統計など、景気に大きな影響を与える経済指標が発表される影響もある。

一方、休日直前の金曜夜の時間帯は「ゴールデンタイム中のゴールデンタイム」で、テレビ局も確実に視聴率を稼げる番組を用意する。「金曜ロードショー」が国民的人気コンテンツのジブリ作品を選んで放送するのも当然のことだ。

こうした偶然が重なって「ジブリの法則」なるものが、まことしやかに伝わっているのである。

「金曜ロードショー」では「耳をすませば」のほか、8月12日に「天空の城ラピュタ」(1986年初公開)、19日に「となりのトトロ」(1988年初公開)と、3週連続でジブリ作品を放送しているが、大幅な株価の値下がりが起こったのは29日の1回だけだった。

ジブリ作品の放送日と翌営業日の株価の推移(単位:円)

放送日 作品名 当日終値 翌営業日終値 価格変動額
8月12日 天空の城ラピュタ 28,546.98 28,871.78  324.80
8月19日 となりのトトロ 28,930.33 28,794.50 -135.83
8月26日 耳をすませば 28,641.38 27,878.96 -762.42

文:M&A Online編集部

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