米国大統領選挙まであと半年に迫った。結果次第では日本企業による米国企業のM&Aに大きな影響を与えかねない。トランプ氏と現職のバイデン大統領、それぞれが当選した場合の影響を現代米国政治外交専攻の前嶋和弘上智大学教授はどうみているのか?
「バイデン氏が再選してもトランプ氏が復帰しても、直接投資は歓迎するが、米国企業の買収にはいい顔をしない傾向は変わらないだろう。政治的問題となっている日本製鉄によるUSスチールの買収は、少なくとも選挙が終わるまで進まない」と前嶋教授は予想する。日本記者クラブでの会見でM&A Onlineの質問に答えた。
とりわけトランプ氏が大統領に復帰した場合、「強いアメリカを主張しているだけに、当選後もUSスチールの買収は認めにくいだろう」と厳しい見方を示した。その上で、買収を成功させるには「USスチールを救済するとアピールし、買収後も社名を残すなどの配慮を明確に示す必要がある」という。
さらに「日鉄はUSスチール買収に当たって、破格の(好条件で)対応をしている。米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスが日鉄による買収に反対しているのも、自社がUSスチールを安く買収したいためだ」とも指摘。安価な買収では不利益を被るUSスチール株を保有する機関投資家や一般株主らへの働きかけも政治的判断を変えるきっかけになるかもしれない。
大統領選挙本線については「トランプ氏とバイデン大統領が五分五分の状態だが、トランプ復活がリアルになればなるほど、バイデン大統領への求心力が高まる」と予測している。
「第3の候補」として無党派層からバイデン票を奪うとされているロバート・ケネディ・ジュニア弁護士については「反ワクチンやイスラエル防衛を除く米軍基地の閉鎖を主張するなど、政策的にはトランプ氏に近い。むしろトランプ票を奪う可能性もありそうだ。そもそも大統領選の帰趨を決める激戦区で選挙リストに載るかどうかもわからない*」と予測。
政界の名門であるケネディ家の15人は4月18日にロバート・ケネディ・ジュニア弁護士ではなく、バイデン大統領を支持すると表明した。
*多くの州では民主党・共和党以外から大統領選に立候補する場合、数千〜数万の署名を提出する必要がある。
文:M&A Online
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