中国の国産ジェット旅客機「C919」が5月28日、初の商用飛行に入った。上海に本社を置く中国商用飛機 (COMAC)が製造を手がけたが、開発は難航。度重なる就航延期に見舞われたが、なんとか初飛行にこぎつけた。
三菱重工業<7011>子会社の三菱航空機(現・MSJ資産管理、会社清算準備中)が手がけていた「三菱スペースジェット」は、6度にわたる就航延期の末に2023年2月7日に開発が中止された。両機のサイズはかなり違うが、同様に開発に苦労した両機の「明暗」はどこで別れたのか?
「C919」は少なくとも4回の開発延期に追い込まれている。試験機の開発は2009年9月に始まり、2015年11月に完成した。当初、試作機は2014年に最終組み立てが完了し、2015 年に試験飛行、2016年の就航を目指していた。
しかし、試作機の生産遅れから試作機の初飛行は2017年5月にずれ込み、就航開始は2018年に延期。その後、2020年、2021年と延期が続き、ようやく就航の運びとなった。
機種名 | COMAC C919 | 三菱スペースジェット |
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生産国 | 中国 | 日本 |
生産会社 | 中国商用飛機 | 三菱航空機 |
開発開始 | 2009年 | 2008年 |
試作機初飛行 | 2017年5月 | 2015年11月 |
初就航 | 2023年5月 | 開発中止(2023年2月) |
乗客定員 | 156〜174人 | 69~88人 |
全長 | 38.9m | 33.4~35.8m |
全高 | 11.95m | 10.3~10.4m |
全幅 | 35.8m | 27.8~29.2m |
エンジンメーカー | 米CFMインターナショナル* | 米プラット・アンド・ホイットニー |
巡航速度 | 834 km/h( マッハ0.785) | 829km/h(マッハ0.78) |
最大航続距離 | 5555 km | 3770km |
機体価格 | 6億5300万元(約130億円) | 40億~50億円(予定) |
*米GE・アビエーションと仏スネクマが折半出資した合弁会社
「三菱スペースジェット」と同様に開発が伸びに伸びた「C919」が就航にこぎつけた理由は、型式証明の戦略にある。「三菱スペースジェット」は米連邦航空局(FAA)の型式証明を受けられず、ついに開発を断念した。
一方、「C919」はFAAはもとより欧州航空安全機関(EASA)の型式証明の取得も先送りし、中国民用航空局(CAAC)の型式認定のみで量産に踏み切った。「国内専用機」ゆえに、「型式認定の壁」を乗り越えて就航にこぎつけたのだ。
これは中国の国土と人口が、日本とは比べ物にならないぐらい大きいことによる。国内線だけで十分なニーズがあるからだ。マーケットサイズの大きさが「C919」の実用化につながったと言える。
もっともCOMACは「C919」は「国内専用機」と割り切っているわけではない。2017年4月にはEASAにも型式証明を申請しており、将来の国際線就航や輸出も考慮しているようだ。
ただ、度重なる開発延期で「C919」の機体価格は当初予想価格の約2倍となる6億5300万元(約130億円)に跳ね上がっている。これは同機と競合する「エアバスA320 neo」や「ボーイング737 MAX」と変わらない。「C919」が世界の航空機市場で戦うためには、生産コストの大幅な削減が必須だろう。
文:M&A Online
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