IPOとは? 投資家と経営者の視点から解説するやさしい基礎知識

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IPOは「Initial Public Offering」の略語で、日本語では「新規公開株」を指します。IPOは株式を証券取引所に上場させて流動性を高め、基本的には誰でも取引できる状態にすることです。

IPOの仕組みを利用して利益を狙う投資手法が「IPO投資」。新規上場時に抽選で「株を公募価格で購入する権利」を手に入れ、上場後の初値(はつね)で株を売却。公募価格と初値に生じる差額で利益を狙います。

この記事では、投資家と経営者の両面から、IPOを解説します。

IPOのメリット|投資家の視点

株式投資は、すでに市場で取り引きされている銘柄を売買して利益を狙う方法です。一方のIPO投資は、上場前の銘柄を公募価格で購入するという違いがあります。

IPO銘柄に投資することを投資家の目線で考えると、以下の3つのメリットがあります。

〇高い確率でリターンに期待できる
〇少額での投資が可能
〇短い時間で結果を出すことができる

高い確率でリターンに期待できる

IPOでは、企業価値をベースに投資家が購入するにふさわしいと考えられる価格を想定し、公募価格を決定します。一般的に適正価格から割引された金額で設定されることもあり、IPO銘柄が上場した際につけられる株価(初値)は多くの場合で公募価格を上回ります。

2022年7月に新規上場したIPO銘柄の公募価格と初値は以下の通りです。

銘柄 公募価格 初値 初値騰落率
INTLOOP<9556> 3,500円 3,150円 -10.0%
HOUSEI<5035> 400円 580円 45.0%
unerry<5035> 1,290円 3,000円 132.6%
エアークローゼット<9557> 800円 910円 13.8%

初値が公募価格を上回り、初値売りするだけで利益を得られるケースが多く見られます。

少額での投資が可能

IPO銘柄への投資は、少額からスタートできるメリットもあります。証券会社で購入者を募るために設定される公募価格は、銘柄ごとに異なるものの、1株500円~3,000円が一般的。

購入単位は1単元(100株)なので、ほとんどの場合は5万円~30万円程度の資金があればIPO銘柄を購入することができます。証券会社によっては1株からと、より少額での購入も可能です。

証券口座に購入資金を準備しておかないと抽選に参加できないケースが一般的ですが、証券会社によっては事前の資金なしで抽選に参加することもできます。高い確率で短期間での利益に期待できるうえ、不動産投資のように大金を用意する必要がないIPO投資は魅力的です。

短い時間で結果を出すことができる

IPO投資はブックビルディングが開始されてから実際に上場するまで、2週間~3週間程度の短期間で決着します。初値が公募価格を上回れば、そのタイミングで売却して利益を確定させることが可能です。

しかもIPOでは抽選に参加して当選した後は上場するまで株価の値動きがありません。平日は毎日株価が変動する通常の株式投資と比較して、精神的なストレスがありません。

IPOのデメリット|投資家の視点


短期間で投資結果が判明し、高確率で利益を得られるIPO投資。しかし、以下のようなデメリットもあることを理解する必要があります。

〇当選確率が低い
〇長期投資に向かない
〇公募割れする可能性がある

当選確率が低い

IPO投資が短期間で利益が出やすいことは、投資家の間では周知の事実です。人気が高いため、公募価格で株を購入するには抽選に参加して当選する必要があります。

競争倍率も高く、銘柄にもよりますが一般的には約1%程度の当選確率とされています。効率の良い投資法ではありますが、IPO投資だけで安定した利益を長期的に得ることはできません。

長期投資に向かない

上場後の初値が公募価格を上回ることが多いIPOですが、そのまま保有を続けることはかえってリスクになる可能性もあります。

株式公開後の買い注文が期待値以下になった場合、IPOに当選した投資家の売却によって上場後の短い間で株価が公募価格を大きく下回ることがあるためです。上場直後の株価が高く、その後は下落する一方の値動きを「初値天井」と呼びます。

株価が下がったあとに弧を描くように株価が回復してコーヒーカップの取っ手がついたような「カップ・ウィズ・ハンドル」を形成し、再び急成長する可能性もありますが、回復せずに下落したままの銘柄も数多くあります。

結果的に長期保有せず、短期で手放した方が利益になることがあります。

公募割れする可能性がある

勝率が高いとされるIPO投資では、初値が公募価格を下回ることも少なくありません。

新規上場する銘柄の期待値が高くても、市場の環境が悪く相場全体が冷え込むと公募割れする可能性があります。直近では2020年2~3月にかけて発生した「コロナショック」によって、IPO銘柄の初値が冴えない状態が続きました。

日経平均株価が大きく値を下げたことで、公募価格割れの銘柄が多く出現したのです。

IPO銘柄の確認方法、申し込み方|投資家の視点

IPO銘柄を購入するには、証券会社に口座開設をしたうえで抽選に申し込む必要があります。

抽選に参加してIPO銘柄を購入するまでの流れは以下のとおりです。

〇IPOを扱う証券会社で口座を開設
〇IPO銘柄の内容を確認
〇仮条件の内容を確認のうえブックビルディングに参加
〇当選したら株式を購入する

IPO銘柄はどの証券会社でも購入できるわけではなく、主に「幹事証券」になった証券会社で購入できます。どの会社が幹事証券になるかは銘柄で異なるため、事前の確認が必須です。

証券口座を持っていない場合は、抽選の締め切りに間に合うように口座を開設する必要があります。

口座を開設した証券会社がどんなIPOを実施しているかは、IPO専用の公式ページに一覧で記載されているので、開設後すぐに確認を行うのが基本的な流れです。

そのうえでブックビルディングに参加します。

ブックビルディングは株式の需要予測をすることを目的に、購入希望者から希望株数と価格を募集して、適正な発行価格を決定する制度のことです。

続いて仮条件を確認します。仮条件は事前に提示される価格帯のことです。仮条件の下限と上限の価格の間で価格を決め、ブックビルディング期間中に申し込みます。

決定価格が出た後に抽選が行われますが、決定価格よりも低い価格で申し込んだ場合は抽選に参加できません。IPOでの抽選に参加する可能性を高めるためにも、仮条件の上限価格で申し込むのが基本です。IPOの申し込み状況はIPO申込専用ログイン画面にログインすることで確認できます。

初値が上がりやすい銘柄の特徴|投資家の視点


IPOは多くの場合で上場後の初値が公募価格を上回りますが、もちろん下回る場合もあります。投資家としては、できる限り利益を出しやすい銘柄を購入したいもの。IPO投資を成功させるなら初値が上がりやすい銘柄を選定することが重要になります。初値が公募価格を上回りやすい条件として、主に以下のようなものがあります。

〇新技術を扱う会社である
〇公募株が売出株よりも多い
〇吸収金額が少ない

IPOではAI・IoT・メタバースなど、近い将来に大きな成長が見込まれる新技術を扱う企業に注目が集まりやすい傾向にあります。IT系の企業で、競合が参入しづらい独自技術を持った企業も人気です。2018年4月に上場したAIベンチャーのHEROZ<4382>は、初値が公募価格の11倍まで跳ね上がったことで知られています。

公募株と売出株の比率にも注目して下さい。

公募株は上場する企業が資金調達のために市場に放出する株式のことで、売出株は既存の株主が利益を獲得するために売却する株式のことです。売出株よりも公募株が少ない場合、初値が公募割れする可能性があります。

これは、既存株主の利益獲得よりも会社の事業の資金調達のほうが会社の成長を促進させるものとして、市場で重視されるためです。公募株が多いほど市場では好材料と見なされ、公募価格割れしにくい傾向にあります、

また吸収金額が少ないかどうかも重要です。吸収金額とは、企業が市場から調達する資金額のことを指します。吸収金額が少ないほど株式市場に出回る株式数が少なく、投資家の需要が高まるのが一般的です。吸収金額が少ない方が、上場後の株価が上昇しやすいとされます。

2018年12月のソフトバンク<9434>の上場は、吸収金額が2兆6,000億円超という途方もない金額でした。ソフトバンクの初値は公募価格を15%下回っています。

過去の特徴的なIPO銘柄|投資家の視点

IPOの値動きは銘柄によってさまざまですが、過去の特徴的なIPO銘柄の値動きは今後の参考になります。

今回は初値売りが成功した事例として「ANYCOLOR」、公募価格を下回った事例として「ヌーラボ」、長期保有で成功できた事例として「ヤフー」を紹介します。

また、M&AがテーマのIPO銘柄についても紹介します。

初値売りの事例|ANYCOLOR

ANYCOLOR<5032>はVTuberグループ『にじさんじ』の運営を行う会社です。ウクライナ情勢による金融不安で上場中止などが複数発表された波乱の展開のなか、2022年6月に上場しました。

圧倒的な買いを集めて初日に値が付かず、上場2日目に公募価格の3倍以上で初値が決定しています。公募価格1,530円に対して初値は4,810円。1単元(100株)を購入して初値で売却していた場合、30万円以上の利益が出た計算です。

IPO投資の基本である「上場後の初値で売却」によって利益を得る典型的な例といえます。

初値売りの事例|ヌーラボ

ヌーラボ<5033>は自身や所属するグループの課題(タスク)をプロジェクトとして管理するツール「Backlog」などのクラウドサービスの開発・提供を行う会社です。

IT関連に属する企業で本来なら期待値が高いのですが、結果としては初値が公募価格を下回りました。公募価格が1,000円のところ上場後の初値が955円と公募価格を45円下回っています。

原因としてさまざまな要因が考えられますが、2021年3月期の売上高が19億3,864万円、経常損益が852万円の赤字となっていました。SaaS銘柄として将来性の期待は大きいものの、足元の業績面からは株価に割高感がありました。

また、このIPOはベンチャーキャピタルの出口戦略としての性格が強く、公募株51万株に対し、売出株がオーバーアロットメントを含めて172万株ありました。

長期保有の事例|ヤフー

IPO投資の基本戦略は、ANYCOLORのように初値で公募価格を上回ることを確認してから売却してしまうことです。

しかし、中には手放さずに保有し続けることで巨額の利益を得ている例もあります。

代表的なのが1997年11月に上場したヤフーです。公募価格は70万円、初値は200万円でした。すぐに売却しても十分な売却益を得られたので、決して悪い結果ではありません。ただし、長期で保有した投資家は更なる利益を得ることができました

インターネット検索の大手としての地位を確立したヤフーは、1株を2株にする株式分割を計13回実施しており、さらに2013年には1株を100株にする株式分割を行いました。上場時の1株をずっと持ち続けていた場合には81万9200株まで株数が増加した計算です。

2013年7月7日の終値である(Zホールディングス<4689>)1株449円を81万9200株持っていたとすると、3億6,782万円になります。

M&Aがテーマの事例①|M&Aセンター

日本M&Aセンターホールディングス<2127>は、中堅・中小企業のM&A仲介業務を全国的に展開する企業です。

優良な中堅・中小企業の譲渡案件情報を全国から入手して全国レベルで社内マッチング。中堅・中小案件の積み上げにより収益を得ています。

2006年10月にマザーズに上場した際の公募価格115万円に対して初値は147万円の値がつき、27.82%となりました。

M&Aがテーマの事例②|ストライク

ストライクは、中小企業の事業承継案件主体のM&A仲介会社です。譲渡先、買収先双方からの仲介報酬が収益源であり、Webサイト「M&A市場SMART」で、不特定多数の中から検索できるマッチングサービスを展開しています。

マザーズに上場したのは2016年6月。公募価格3,440円に対して初値は7,770円。125.9%にもなりました。

2016年8月期の業績は売上高が前期比30.7%増の18.6億円、経常利益が同12.4%増の6.1億円と増収増益の見通しで急成長していました。中堅・中小企業のM&Aにおいて、オーナー経営者の高齢化に伴う後継者問題があったことも、初値高騰の背景と考えられます。

M&Aがテーマの事例③|M&A総合研究所

M&A総合研究所<9552>は、DX・AI技術を活用したM&A仲介事業を展開する会社。M&A仲介としては珍しくWeb集客に力を入れており、コンテンツマーケティングを得意としてる会社です。

2021年にAIアルゴリズムの開発でPKSHA Technology<3993>と業務提携もしています。料金体系は着手金や中間報酬を受け取らない完全成功報酬としているのも特徴です。

上場したのは2022年6月28日のことで、公募価格1,330円に対して初値は2,510円。88.7%となりました。

IPOの目的|経営者の視点


ここから先は、投資家目線から経営者の目線に切り替えてIPOの重要性について見てみます。

企業がIPOを行う目的としては、大きく分けて3つが考えられます。

〇資金調達手段の多様化
〇知名度向上による新規取引、採用の拡大
〇信用度の引き上げ

企業活動でもっとも重要な資金調達を多様化させることができるのが、企業がIPOで上場する大きなメリットです。非上場の企業の場合は金融機関の借入や、縁故者、ベンチャーキャピタルによる出資など、限られたルートでしか資金調達することができません。

上場企業であれば取引所で株式が流通しているため、一般の投資家から広く資金調達ができるようになります。またIPOで上場することで一般の消費者や投資家に社名が伝わり、企業ブランドの向上も見込めます、

世間に名前が広まることで信頼が向上し、新規取引や採用活動の拡大にも寄与します。

さらに、IPOのための基準をクリアしたことで健全な経営が行われていることを示せるのもメリットです。上場したという事実が、企業としての社会的信用を得ることにつながります。

上場までのステップ|経営者の視点


IPOで市場に上場するまでは「上場準備期間」と「申請年度」に分かれています。準備に着手してから実際に上場するまで東証で3~4年程度の時間がかかるのが一般的です。

具体的に上場するまでのステップは以下の通りです。

〇監査法人との契約
〇主幹事証券会社の決定
〇社内管理・監査体制の確立
〇株式事務の整備

監査法人との契約

株式上場(IPO)から3期以上前に、会社として株式上場(IPO)することを意思決定します。そのうえで、会計監査を受けるために監査法人又は複数の公認会計士の選定を行うことが必要です。

開示される企業内容は正確で疑いようのないものである必要があり、上場直前の2週間前には上場会社監査事務所による財務諸表監査が求められます。

上場を申請するための「有価証券報告書(Ⅰの部)」には、金融商品取引法に準ずる2年間の監査報告書の添付が必要です。原則として3年前の決算期末の棚卸資産に関する実地棚卸において公認会計士の立ち合いが求められるので、それより前に監査契約を結ぶ必要があります。

主幹事証券会社の決定

上場の意思が決まったあとは、早い段階で主幹事証券の決定を行います。

主幹事証券とは有価証券の発行を引き受ける幹事証券会社のうち、募集や売り出しの中心となる証券会社のことです。上場を目指す会社と提携し、以下のような業務を請け負います。

〇上場の準備段階での資本政策
〇社内体制整備の指導
〇上場手続き
〇株式の募集・売出などを引き受ける引受審査
〇株式の販売

社内管理・監査体制の確立

上場審査には「内部監査部門の設置」と「内部監査の実施」が必要ですが、その前に社内管理体制を構築する必要があります。管理のレベルは企業ごとに異なりますが、非上場では管理レベルが不十分なことも珍しくありません。上場までに以下のような社内管理体制を立ち上げる必要があります。

〇日常業務に内部けん制機能を持たせ、不正やミスのない体制を構築
〇上場企業として必要な情報開示をタイムリーに行う体制の構築
〇特定の役員に依存せずに事業を継続できる組織体制の確立

作られた体制が円滑に運用されているかを監査するのが、内部監査部門の役割です、

内部監査部門は「十分な管理組織が整備、運用されているかどうか」「事故、不正をある程度未然に防止させ、不測の損失を防ぐ」など、適切な対応ができる状況にあるかどうかをチェックします。

上場の3~2期前には内部監査部門を設置して内部監査規程の設定・部門の設置・人員配置を行います。直前期と申請期には年間を通じて監査と改善指示、フォローアップを行い、その結果をすべて「登録申請のための報告書(Ⅱの部)」に記載します。

株式事務の整備

株式公開会社は、上場までに証券取引所が指定する株式名簿管理人に株式事務を委託する株式事務代行機関の設置の義務があります。

株式事務代行機関は上場後、株主名簿の管理、株主総会の運営・配当金の事務などの役割を担います。通常は信託銀行などが株式事務代行機関にあたり、株主名簿管理人とも呼ばれます。

事務代行機関は資本政策や株主総会運営のノウハウに長けており、株主の整理や特定が必要になることもあるので、事前に契約することが望ましいです。

投資ファンド・ベンチャーキャピタルの出口戦略としてのIPO|経営者の視点

投資ファンドやベンチャーキャピタルが、投資資金を回収するための出口戦略としてIPOが活用される場合もあります。出口戦略の具体例として「スタートアップ」「事業承継」「カーブアウト」の3つを解説します。

スタートアップ

スタートアップは社会に変革をもたらすような新しいビジネスモデルの開拓を目指す企業のことです。スタートアップは短期間で急激にビジネスを成長させて利益を生むことを目標としている点で「ベンチャー企業」とは異なります。

スタートアップがIPOで新規上場することで社会的な認知度を向上させる効果が期待できます。ゼロからビジネスモデルを開拓するスタートアップにとって、注目度を高めつつ資金調達を行えます。

IPOを実現させると社会的な信用力の向上にもプラスに作用するので、金融機関からの融資可能額も増加することが視野に入ります。さらにM&Aと違って創業者の発言権が失われず、影響力が保たれるというメリットもあります。

事業承継

事業承継を行う方法には親族に承継する「親族内承継」と、自社の役員や社員、または外部の第三者へ事業を承継する「親族外承継」があります。親族外承継の方法として自社の売却・合併を行うM&Aのほか、株式を公開して自社株を売り出すIPOも利用されます。

IPOを選択すれば自社株を市場で売買できるようになるため、自社株を売却して納税資金にあてることができます。売却した資金を役員退職金に充てるなど一時的に自社株の評価額を下げ、節税対策につなげることも可能です。

自社株を売却して現金にすれば、納税して上場後の経費の支払いに対応できるメリットもあります。

カーブアウト

カーブアウトは「切り出す」という意味の英語です。

大手企業・中堅企業は親会社の出資やファンドの投資を受けて、技術や事業の一部を外部に切り出すことがあります。投資ファンドが扱う案件では、主力事業とは異なる非中核事業が多く見受けられます。例えば、不動産管理会社が外食事業を持っていたとします。主力の不動産管理に経営資源を集中するため、外食事業を投資ファンドに売却するのです。

投資ファンドは買収した事業を新会社として育成し、店舗数の拡大などによって企業価値を高めます。

事業を売却した企業は、カーブアウトによって潤沢な経営資源を獲得できるメリットがあります。

カーブアウトした企業がIPOを利用して新規株式公開することはカーブアウトIPOとも呼ばれます。東芝<6502>の半導体事業を切り出して誕生したキオクシア(東京都港区)は、ベインキャピタル(東京オフィス:東京都千代田区)支援のもと、近い将来のIPOが期待されています。上場すればカーブアウトIPOです。

エグジットとしてのM&A|経営者の視点

投資ファンドやベンチャーキャピタルの出口戦略としてIPOが活用されることを紹介してきましたが、M&Aを利用してエグジットを行う経営者も少なくありません。

M&Aでのエグジットの手段として挙げられるM&Aの手法は、主に以下の3つです。

〇第三者への事業譲渡・株式譲渡
〇MBO
〇EBO

「第三者への事業譲渡・株式譲渡」は、文字通り事業や株式を第三者に譲り渡す方法です。会社の事業が複数に分かれている場合、それぞれを別の会社に譲渡することもできます。事業同士の関連性が薄く、買取企業が全く異なる場合に有効です。

もう1つのMBOはManagement Buyoutの略語で「経営者による買収」を指します。自身がオーナーで経営は別の人間に任せている場合、オーナーから経営者に株式を売却する形でオーナーのエグジットを達成します。

最後のEBOはEmployee Buyoutの略語で「従業員による買収」です。日本ではビジネスホテル運営会社ユニゾホールディングス(東京都港区)で活用されました。2020年4月に成立、上場廃止となりました。日本の上場企業では初の事例でした。

効果的にIPOを活用することが重要

IPOは割安な公募価格で株式市場に上場する方法のことで、投資家にとっては短期間で利益を得られる点がメリットです。一方の経営者にとっても経営権を残しながら資金を調達でき、出口戦略にも活用できる手法として活用されています。

投資または経営上の手法として、IPOは効率的なものの一つです。

文:M&A Online編集部