異例の早い「梅雨明け」「猛暑」による水不足でインフレ加速も

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早くも取水制限に踏み切るダムも(写真はイメージ)

早い梅雨明けがインフレを加速するかもしれない。6月27日に関東甲信地方、東海地方、九州南部で梅雨明けが発表された。異例の早い梅雨明けで、梅雨の期間は関東甲信が21日間、東海が13日間、九州南部が16日間と、いずれも史上最短を記録。関東甲信では平年の半分以下の降雨量しかない場所もあり、梅雨の短さと相まって深刻な水不足が懸念されている。

工業用水不足で工場の稼働率が低下する恐れも

1994年の「平成6年渇水」では福岡市や北九州市、兵庫県姫路市、高松市、松山市などの都市で上水道の断水措置が取られた。こうした生活用水よりも先に制限がかかるのが工業用水だ。工業用水の取水制限が始まると、井戸水で代替できない限り操業時間の短縮や生産ラインの休止を余儀なくされる。

そうなれば生産量は減少し、モノ不足と出荷価格の高騰は避けられない。2002年の渇水では東海で24.7%、近畿内陸で22.6%、山陽で20.5%の工業用水の取水制限がかけられた。単純にその分だけ生産量が減るわけではないが、大量の水を必要とする化学工業や鉄鋼業、紙パルプ・紙加工業への影響はある。

このうち化学工業や鉄鋼業は工業用水を再利用する回収率が80〜90%と高いが、紙・パルプ・紙加工業は40%と新鮮な工業用水の依存度が高い。トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの家庭紙やダンボールなどの梱包材の生産が落ち込む恐れがありそうだ。

渇水が原因ではなかったが、2022年5月に工業用水の取水トラブルにより、豊田自動織機の完成車工場(愛知県大府市)での生産が半日ほど停止した。渇水による取水制限が広がれば、思わぬ業種に影響が拡大する可能性もある。すでに九州の嘉瀬川や山陰の日野川、四国の吉野川や銅山川などで工業用水の取水制限が始まっている。

早い梅雨明けは猛暑期間が長引くことも意味する。冷房使用の増加で電力不足も深刻だ。水不足と電力不足のダブルパンチで生産ラインの稼働率が落ちればモノ不足はさらに深刻化し、インフレが加速するリスクはますます高まる。

M&A Online編集部


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